「AI色」の未来は避けられない

2025/07/07 08時35分公開

高城未来研究所【Future Report】Vol.733(2025年7月4日)近況


今週も、バルセロナにいます。


今年に入ってAIに関するお問い合わせを多数頂戴しております。


AIとどのように付き合えばいいのか?

これから社会は、AIによってどのように変わるのか?

日々AIと話してばかりいて、友達の必要を感じなくなったなどなど。


そんな中、先日Open AIのサム・アルトマンが「穏やかなシンギュラリティ」とタイトルをつけたブログを発表しました(https://blog.samaltman.com/the-gentle-singularity)。


これは、従来イメージされてきた「突然訪れる劇的な技術的特異点(シンギュラリティ)」とは異なり、AIの進化が私たちの日常に静かに、しかし確実に浸透していく過程を表現しています。

彼の主張によれば、シンギュラリティはある日突然やってくる爆発的な転換点ではなく、すでに人々の生活の中に静かに入り込み、気づかぬうちに社会の基盤を変え始めている「緩やかな現象」だというのです。


例えば、すでにChatGPTや各種AIアシスタントが多くの人の仕事や学習、創造活動に欠かせないツールとなり、AIによる自動化や分析が日常業務の一部として組み込まれています。

しかし、街中に人型ロボットが溢れたり、すべての職業が一夜にして消えるような劇的な変化は起きていません。

むしろ、AIは「当たり前のもの」として静かに社会に溶け込んでいるのが現在です。


アルトマンは、人類はすでに「事象の地平線(event horizon)」を越えていると述べています。

これは、AIが一部の分野で既に人間の能力を超えている状況を指し、つまり実質的なAGIの到来です。


大規模言語モデル(LLM)は、文章生成やプログラム補助、さらには科学的発見の支援など、幅広い分野で人間の能力を凌駕し始め、この変化は、指数関数的な進歩の一部に過ぎません。

AI自身がAI研究を加速する「自己強化ループ」が始まっており(つまり、オートマトン)、進歩の速度はさらに増し、科学的発見や生産性の向上、そして知能やエネルギーの極端な豊富さが、今後の社会にかつてない変化をもたらす可能性があります。


アルトマンが強調するのは、「驚異が日常になる」というプロセスです。

数年前にChatGPTが登場した時の衝撃が、今や当たり前のツールとして多くの人の生活に組み込まれている現状を思えば、「シンギュラリティは徐々に進行する」という感覚は非常にリアルだと言わざるを得ません。


彼は、2025年にはコーディング、2026年には新たな科学的洞察、2027年には物理的なロボットといった具体的な年次予測も示し、今後数年でAIがさらに多様な分野に進出していくことを示唆しています。


また、2030年代の生活についても「本質的には変わらず、でも根本的に変わる」と表現しています。家族愛や創造、遊びといった人間らしい営みは変わらない一方で、知能やエネルギーが極端に豊富になることで、社会全体の構造や価値観が大きく変化する可能性を指摘しています。


例えば、AIによる科学的発見の加速や、生産性の飛躍的な向上、ロボットによる自動化の進展など、私たちの「当たり前」が静かに書き換えられていくのです。

一方、日常生活の表層は大きく変わらず、人々は引き続き家族と過ごし、自然の中で遊び、愛を育むことができる、と彼は述べています。


しかし、僕は家族愛や創造、遊びといった人間らしい営みも抜本的に変わると考えます。


冒頭に紹介した読者からのご質問にあったように、「日々AIと話してばかりいて、友達の必要を感じなくなった」と感じる人は年々増えており、例えば20年前にオンラインで出会った人と付き合ったり結婚するなど、ほとんどの人たちが考えもしなかった未来をいま生きている現実を冷静に見ると、今後20年でAIを生涯にわたるパートナーだと心から思う人も増えるでしょう。


この過程で僕たちは「人間らしさ」や「意味」「自由」をどのように守っていくのか、という根源的な問いも浮かび上がります。

あわせてAIが知的労働や創造活動の多くを担うようになったとき、「人間の役割」や「生きる意味」はどこに見出されるのでしょうか?


これこそ、僕が今世紀初頭から20年以上にわたってお伝えしてきたように、「21世紀は宗教と哲学の時代になる」真意そのものです。 


今後、世界はいままでとは違った意味での少子化時代に突入すると思われます。

もしくは、人類が絶滅へと向かう未来は、AIによって支えられた「あたらしい孤独」を楽しめるようになるからではないのか、と考える今週です。


どにらにしろ、「AI色」の未来は避けられません。


(これはメルマガ『高城未来研究所「Future Report」Vol.733』の冒頭部分です)


高城未来研究所「Future Report

高城未来研究所は、近未来を読み解く総合研究所です。実際に海外を飛び回って現場を見てまわる僕を中心に、世界情勢や経済だけではなく、移住や海外就職のプロフェッショナルなど、多岐にわたる多くの研究員が、企業と個人を顧客に未来を個別にコンサルティングをしていきます。毎週お届けする「FutureReport」は、この研究所の定期レポートで、今後世界はどのように変わっていくのか、そして、何に気をつけ、何をしなくてはいけないのか、をマスでは発言できない私見と俯瞰的視座をあわせてお届けします。


高城剛 プロフィール

1964年葛飾柴又生まれ。日大芸術学部在学中に「東京国際ビデオビエンナーレ」グランプリ受賞後、メディアを超えて横断的に活動。 著書に『ヤバいぜっ! デジタル日本』(集英社)、『「ひきこもり国家」日本』(宝島社)、『オーガニック革命』(集英社)、『私の名前は高城剛。住所不定、職業不明。』(マガジンハウス)などがある。 自身も数多くのメディアに登場し、NTT、パナソニック、プレイステーション、ヴァージン・アトランティックなどの広告に出演。 総務省情報通信審議会専門委員など公職歴任。 2008年より、拠点を欧州へ移し活動。 現在、コミュニケーション戦略と次世代テクノロジーを専門に、創造産業全般にわたって活躍。ファッションTVシニア・クリエイティブ・ディレクターも務めている。 最新刊は『時代を生きる力』(マガジンハウス)を発売。

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