「銀座」と呼ばれる北陸の地で考えること

2023/09/18 08時35分公開

高城未来研究所【Future Report】Vol.639(2023年9月15日)近況


今週は、福井県敦賀市にいます。


2024年3月16日に北陸新幹線の金沢〜敦賀間が延伸され、おおむね毎時1本東京から直行便(3時間8分)が出るため、今後、北陸観光のあたらしい拠点として急浮上中の敦賀は、現在、インバウンドを想定したプロモーションに余念がありません。


歴史的に見れば、明治以前のグローバルだった街は、古代から海(日本海海路)を渡ってきた渡来人がはじめにたどり着く山陰から若狭湾の海岸線沿いに点在する地域であり、ここを通過して渡来人たちは大和など、時の中心地だった内陸部へと向かいました。


畿内に至る水運を利用した物流・人流ルートには、古代から敦賀と舞鶴間の若狭湾で陸揚げして、琵琶湖を経由して淀川水系で難波津に至る内陸水運ルートが主流でした。

この内陸水運ルートには、日本海側の若狭湾以北からの物流の他に、若狭湾以西から対馬海流に乗って来る物流も接続しており、結果、幹線内陸水運ルート沿いの京都に室町幕府が開かれ、畿内が経済だけでなく政治的にも日本の中心地となった経緯があります。


戦国時代には、敦賀は物資の結節点として重宝され、信長の越前一向一揆や秀吉の賤が岳の戦いの舞台にもなります。

近世では、商都大阪から荷を船で運ぶ北前船の発着地として港が栄えますが、このようなモノと人が集まる地域ゆえ、情報拠点でもありました。

例えば、新潟や東北で謀反や一揆が起きても、早馬より海路のほうが圧倒的に早く、敦賀に集められた情報は南下し、京都へ届けられます。

こうして、敦賀は情報拠点としての側面も持ち合わせていました。


ところが、明治維新によって今日まで続く薩長が日本をあたらしくデザインしなおしたため、敦賀は裏日本として追いやられ、今では関西圏の電力を賄うため若狭湾に原発を次々と建設。

いまでは「原発銀座」と呼ばれています。


実は県内で関西電力の原発4基も動かしていますが、この地域の人たちが使っている電力は北陸電力からのものであり、今年に入って平均で50%近くの値上げが行われています。

原子力最大立地の福井県における電気代の高騰というおかしな状況への政府の対応は皆無に等しく、北陸新幹線の延伸でお茶を濁そうとしているのが伺え、地元も各種補助金に甘んじているのが正直なところです。

ちなみに長年放置されていたこともあって、観光インフラはまったく整っておりません。


国内最多14基の原発が集中する「原発銀座」と言うより補助金銀座。

「銀座」と呼ばれても観光地になることは絶対ないのだろうな、と見どころなき街を歩きながら思う今週です。


(これはメルマガ『高城未来研究所「Future Report」Vol.639』の冒頭部分です)


高城未来研究所「Future Report

高城未来研究所は、近未来を読み解く総合研究所です。実際に海外を飛び回って現場を見てまわる僕を中心に、世界情勢や経済だけではなく、移住や海外就職のプロフェッショナルなど、多岐にわたる多くの研究員が、企業と個人を顧客に未来を個別にコンサルティングをしていきます。毎週お届けする「FutureReport」は、この研究所の定期レポートで、今後世界はどのように変わっていくのか、そして、何に気をつけ、何をしなくてはいけないのか、をマスでは発言できない私見と俯瞰的視座をあわせてお届けします。


高城剛 プロフィール

1964年葛飾柴又生まれ。日大芸術学部在学中に「東京国際ビデオビエンナーレ」グランプリ受賞後、メディアを超えて横断的に活動。 著書に『ヤバいぜっ! デジタル日本』(集英社)、『「ひきこもり国家」日本』(宝島社)、『オーガニック革命』(集英社)、『私の名前は高城剛。住所不定、職業不明。』(マガジンハウス)などがある。 自身も数多くのメディアに登場し、NTT、パナソニック、プレイステーション、ヴァージン・アトランティックなどの広告に出演。 総務省情報通信審議会専門委員など公職歴任。 2008年より、拠点を欧州へ移し活動。 現在、コミュニケーション戦略と次世代テクノロジーを専門に、創造産業全般にわたって活躍。ファッションTVシニア・クリエイティブ・ディレクターも務めている。 最新刊は『時代を生きる力』(マガジンハウス)を発売。

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