ラスベガスは再び大きな方向転換を迫られるか
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高城未来研究所【Future Report】Vol.618(4月21日)近況
今週は、ラスベガスにいます。
コロナ禍も去って世界中でイベントや展示会も開催されはじめ、「コンベンションの街」ラスベガスにも少しづつ活気が戻ってきました。
ラスベガスがカジノの街から「コンベンションの街」へと変貌した1990年代。
当時LAに住んでいた僕は、頻繁に開催されたコンベンションへ通うと同時に、この町の変貌を目の当たりにしてきました。
80年代までは典型的なギャンブラーのためのカジノの街でしたが、家族向けエンターテイメントとビジネスのためのコンベンション・シティへと脱却を計ります。
この背景には、カジノライセンスを厳格化したことで、仕切っていたマフィアを追い出し、代わりに大企業を招き入れ、資金提供は当時バブル経済真っ只中だった日本の金融機関の後押しによる取り組みがありました。
他ならぬ「長銀」(1998年破綻)もそのひとつです。
こうして、マフィアのボスに代わって日本から資金提供を受けた大企業がホテル、カジノ、ナイトクラブを所有するメガリゾート時代がスタートします。
これが今日、日本のIRの原型となります。
あわせて、ラスベガスではビジネス客を呼び込むために、コンベンションを充実させようと誘致に励みました。
そして、ラスベガス最大のコンベンションに成長したのが、コンピュータの展示会「COMDEX(Computer Dealer's Exhibition)」です。
のちに、この展示会を日本のソフトバンクに売却し、大きな資金を得た主催のシェルドン・アデルソンは、ラスベガスの古いホテル「サンズ」を買収し、跡地にメガリゾート「ザ・ベネチアン」を開業します。
そして、アデルソンは「サンズ」のブランドを、マカオ、シンガポールへと拡充し、「ラスベガスのグローバルチェーン化」を進めるのです。
こうして長年に渡って日本の資金に支えられながら、ラスベガスは街づくりを行って拡大してきました。
1990年には20万人強だった人口は、この30年でおよそ三倍まで膨れ上がり、特に若い世代の流入が目立ちます。
あわせて不動産価格も上昇。
2018年9月にラスベガスの住宅価格は前年同期比13.5%増となり、全米平均の2倍以上となりました(シアトルに並んで全米第2位)。
一方、交通渋滞も増えてきましが、昨年、イーロン・マスクがつくった専用地下トンネルを専用車両が通り人々を運ぶという新しい交通システム「Vegas Loop(ベガスループ)」が誕生。
現在はコンベンション期間中にコンベンション参加者しか利用できませんが、やがては空港と街の中心地を結ぶ「50年計画の新型都市交通網になる」と発表し、今後の街づくりにも余念がありません。
コロナ禍が去ったこともあって、以前に増して活気付くラスベガスですが、景気の荒波を一番先に受けやすいのも事実で、ドナルド・トランプを資金面で最も支えてきた共和党の大口献金者であり、日本のIR法案成立等、安倍政権に多大な影響を与えた件のラスベガスの立役者シェルドン・アデルソンも一昨年にお亡くなりになりました。
アデルソンは、マカオを通じて中国共産党にも影響力を持っていたことから、中国と折り合いをつけるよう各国政権に働きかけていた存在でもありました。
そして、コンベンションもオンライン化が進む今日。
1990年代同様、いまラスベガスは大きな方向転換に迫られているのではないか、と考える今週です。
それにしても日中は暑い。
もともと何もない砂漠だけあって。
(これはメルマガ『高城未来研究所「Future Report」Vol.618』の冒頭部分です)
高城未来研究所「Future Report」
高城未来研究所は、近未来を読み解く総合研究所です。実際に海外を飛び回って現場を見てまわる僕を中心に、世界情勢や経済だけではなく、移住や海外就職のプロフェッショナルなど、多岐にわたる多くの研究員が、企業と個人を顧客に未来を個別にコンサルティングをしていきます。毎週お届けする「FutureReport」は、この研究所の定期レポートで、今後世界はどのように変わっていくのか、そして、何に気をつけ、何をしなくてはいけないのか、をマスでは発言できない私見と俯瞰的視座をあわせてお届けします。
高城剛 プロフィール
1964年葛飾柴又生まれ。日大芸術学部在学中に「東京国際ビデオビエンナーレ」グランプリ受賞後、メディアを超えて横断的に活動。 著書に『ヤバいぜっ! デジタル日本』(集英社)、『「ひきこもり国家」日本』(宝島社)、『オーガニック革命』(集英社)、『私の名前は高城剛。住所不定、職業不明。』(マガジンハウス)などがある。 自身も数多くのメディアに登場し、NTT、パナソニック、プレイステーション、ヴァージン・アトランティックなどの広告に出演。 総務省情報通信審議会専門委員など公職歴任。 2008年より、拠点を欧州へ移し活動。 現在、コミュニケーション戦略と次世代テクノロジーを専門に、創造産業全般にわたって活躍。ファッションTVシニア・クリエイティブ・ディレクターも務めている。 最新刊は『時代を生きる力』(マガジンハウス)を発売。