【体癖論】10分でわかる上下体癖

2023/03/14 12時47分公開 / 2023/03/16 16時48分更新

今日は上下体癖について少しお話しましょう。上下体癖は頭脳型とも呼ばれており、どちらも、頭(脳)に特徴がある、ということでは同じです。ただ、上下1種と2種のぱっと見の印象はずいぶん異なります。

 

上下一種は、首が太くて、天に向かって真っ直ぐに伸びる大木のような印象を与えます。西洋の教会には、真っ直ぐに天高く伸びた塔がありますよね。あの塔に登ると、町のすべてを見渡すことができる。あれはまさに、上下1種のイメージです。

 

そういう「木の幹」のような上下1種に対して、上下2種は「枝」です。地方のお金持ちの家に行くと、玄関のあたりに小洒落た松の枝がしゅっと伸びています。上下2種はあの枝のような印象です。お菓子に「小枝」というのがありますが、あれをみると、僕は上下2種を連想してしまうんです(笑)。細くて、繊細だけど、しなやかで強い木の枝のようなイメージ。

 

僕がよく例に出す「樫の木と葦」という童話がありますが、あれを上下1種と2種の対比として捉えてみるのもいいでしょう。樫の木は、キャラクター的には上下1種というよりは、いばっていてねじれのような印象もあるのですが、「大木」という意味では、上下1種的です。一方、葦は、なよなよとしているけれど、大嵐がきてもぽきっと折れてしまわない。風になびいて、しなやかにやりすごす。これは上下2種的といえます。

 

では、両者には、「上下体癖」としての共通点はあるのか? ひとつの切り口として、「地味」というキーワードがあります。

 

上下体癖というのは、「わかりやすさ」と「わかりづらさ」の両面を持った体癖といえます。3種や7種のように、前面に個性が出てくることはあまりありません。地味で、大人しく、世の中の常識や良識を代表している。ところが、一皮剥いたその向こうには、他の体癖の人には想像もつかないようなディープな世界が広がっている。それが「地味」という言葉に集約できるんじゃないか、と僕は考えています。

 

ではそもそも「地味」とは何か? 現代ではなんとなく「地味」という言葉にネガティブなイメージを持つ方もいらっしゃるかもしれませんが、もともと、地味という言葉には、落ち着いているとか、品がいい、というポジティブなイメージがありました。ある時期までは、「地味」というのは良し悪しを指す言葉というよりは、ひとつのカテゴリーを示す言葉であったのです。

 

「地味」には、独特の奥深い世界があると僕は思います。たとえば江戸時代の半ばに、江戸幕府が、庶民が贅沢な着物を着ることを禁止した、「奢侈禁止令(しゃしきんしれい)」というものが発令されたことがあります。

 

このとき、江戸の職人たちが生み出したのが、四十八茶百鼠(しじゅうはっちゃひゃくねず)と呼ばれる、茶系、ねずみ色(グレー)系のカラーバリエーションです。「四十八」とありますが、実際には、茶系、ねずみ色系のいずれも100種類以上の色名に分かれ、江戸当時の人々のファッションの楽しみになったといわれています。

 

みなさんも機会があれば、着物屋さんで実際の布や、博物館で色見本帳などを見て、実際にそのバリエーションの豊かさを体験してみてください。現代の僕らは、茶系、ねずみ色系でそれぞれ、5から10種類程度思い浮かべられたら、かなり色についての知識が豊富な人だといえるでしょう。とてもじゃないけれど、100種類なんて思い浮かばないというのが普通だと思います。

 

ところが、実際に江戸時代に染められた色の見本などを見ていくと、たしかにひとつひとつ、別の色だということがわかってくるんですね。

 

鹿みたいな茶色、黒っぽい茶色。

空色に近いグレーに、金属に近いようなグレー。

 

……色見本を見る前だったら同じ色としか認識していなかった色の中に、実は十数種類もの異なる色があった、ということがわかる。さらには、その微妙な色の違いに対して、「あ、これはいい色だな」「これはちょっと苦手」というような、自分の好みまでがすっと身体レベルで感じ取れるようになる。「地味」には、すごく繊細で、豊かな世界が内包されていたんだということがわかってくる。

 

そういう江戸の四十八茶百鼠に象徴されるような「地味の豊かさ」を、上下体癖の人たちは、感じながら生きています。こういう切り口で捉えると、1種と2種に共通する上下体癖独特の世界を、一歩深く理解できるのではないかと思います。


※この記事は名越康文のメールマガジン「生きるための対話」からの抜粋です。


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