迷走する中道改革連合のこれまでを振り返る

2026/05/29 21時30分公開

人間迷路 Vol.513より】


 中道改革連合(略称・中道)の発足から4カ月あまりが経ちました。

 私もいくつか記事を書きましたが、いま見返しても「何だったんだあれは」という感じはします。旧立憲・馬淵澄夫さんと創価学会副会長の佐藤浩さんの乾坤一擲の枠組みは、博打として大外れした結果、ともに党勢が衰亡し始めていた旧立憲民主党と旧公明党の死期を早めただけではないかという怖れすら感じます。

 どうにかならんかなと思って、部外者ながらちらちら見ていましたが… これがまた、なかなかしんどい状況なので整理してみたいと思ったわけですよ。

 直近の動きで言えば、公明党の竹谷とし子さんと中道代表の小川淳也さんが5月17日、秋田市で並んで記者会見に臨み、参院議員の合流に向けて「協議を重ねている」と前向きな言葉を口にしました。これ自体は、まあそうですよねというか、良い話だろうとは思います。見た目は連携が進んでいるようにも映りますが、水面下の実態はかなり違っていたようです。3党の足並みはいまも揃わず、こちらで訊き及ぶ現場の実情で言えば。2027年春の統一地方選に向けた絵は描けていません。

 そもそも中道は、繰り返しにはなりますが、昨秋に自公連立を解消した公明党が「中道改革の軸になる」と大方針を掲げ、高市早苗首相による冒頭解散という局面で急ピッチに結成した党です。立憲民主党の野田佳彦さんが「公明の旗の下に集いたい」と申し出る形で両党の衆院議員が合流し、2026年1月16日に設立届け出がなされました。高市政権および協力関係にある日本維新の会への対抗軸という理念のもと、世界的なポピュリズムの台頭や国内の右傾化への危機感を共有して結集した、という建前でした。ただし参院議員と地方議員については「後に合流する」という構想が当初から棚上げにされており、足元が揃わないまま選挙戦に突入しました。

 割と善戦するんじゃないかという観測がありましたが、実際には、ええ、まあああいう結果です。

 この衆院選での敗北が、かえって事態をこじらせます。2月8日投開票の結果、中道は公示前167議席から49議席へと壊滅的な敗北を喫しました。詳しく見ると、公明出身の候補者は28人全員が当選し、前回2024年衆院選の24議席を上回りました。旧公明党単体で言えば、ビッグに焼け太ったとも揶揄されます。ところが立民出身者は144人が出馬して当選はわずか21人と、7分の1ほどに縮小しました。立民出身の候補者や支援してきた労働組合の幹部からは「公明に比例を譲りすぎた」という執行部批判が相次ぎました。まあ気持ちはわかるけど、もっと勝てるつもりだったんだからしょうがないんじゃないですかね。選挙期間中から落選した玄葉光一郎さんら立民出身の前職議員が「比例の復活枠がほとんどない。小選挙区で勝たないといけない」と危機感を訴えていた通り、比例配分の非対称が立民側の議席を直撃した形です。「中道に乗ったら損をする」という感覚が党内と地方組織に広く染み込んだのは、こうした経緯からです。

 惨敗を受けて野田さんと斉藤鉄夫さんが共同代表を辞任し、2月13日の代表選で小川淳也さんが党所属の衆院議員49人による投票で新代表に選出されました。小川さんは「真摯な姿勢で誠実に勤めを果たしていきたい」と抱負を語り、党再建を誓いましたが、同じ日、存続している立憲・公明の参議院会派はそれぞれ別々の会派で特別国会に臨むことを決定しました。この時点で、早くも「思ってたんと違う」という結果に対する不満と、そもそも労組を母体としてきた旧立憲と宗教団体を立脚点とする旧公明党との間で「そもそもこの取り合わせはまずかったのでは」といういまさらの反省が多く聞かれるようになります。創価学会員が、労組の支持を受けてきた議員の青いビラを配れるのかという、本質的なところが着地しないまま特別国会に突入すると、政策面というより政治姿勢のへだたりを埋められずに5月も終わろうとしているわけですよ。代表交代と参院分離が同日に並んだ光景は、中道が置かれた構造的な矛盾を端的に示していました。

 前後して、中道の常任幹事会は5月12日、衆院選の総括を公式にまとめました。いろいろサマリーとか拝見しましたが、意思疎通のむつかしさを肌身で感じる内容で恐怖するほどです。両党の支持基盤と得票実績をもとに一定の議席を確保できるとの前提があったが、それが「最大の誤算」だったと認めています。また「選挙目当ての急造新党」との批判を払拭できなかったとも分析しており、旗揚げの段階から抱えていた脆さを執行部自らが認定した形です。もちろん、最初から本件が6月と見込まれた高市政権解散総選挙を読んでの選挙互助的野合だった面は当然で、そんなもの最初から認めればいいのになぜか「選挙目当てではなかった」とか言い始めて、そんなわけないやろと異論が出るのも当然と言えます。

 この空気が、統一地方選をめぐる立民の態度に直結しています。3月の党大会で採択された2026年度活動方針では、統一地方選に立民の独自候補を擁立することが明記されました。問題は中道への合流の是非について結論を出す時期を「2027年6月をめど」と示した原案があったのに、党内の異論を踏まえてその期日を削除したことです。方針には「立民として守るべき理念、政策、組織的自立性を明確にする」という文言が入り、中道・公明との関係は「共有できる政策課題は誠実に連携を進める」という表現にとどまりました。合流するともしないとも言わない、時期も言わない、という姿勢を党大会で公式に確認したわけです。立民の水岡俊一代表のもと、党内では「組織的自立性」という言葉が盾になっており、地方組織や連合系の支持者の反発が合流論を押しとどめている実態があります。

 各団体、各政治家の考えは痛いほどわかります。おいそれとコミットできないし、調整を進めるにもハードルが高いものも多くて取りまとめに苦労するのも当然と言えます。

 しかし、だとするならなんでああいう感じで適当な雰囲気で合流を決めてしまったのかという、本当の意味での総括がどうしても必要になります。それは、野田佳彦さんと斉藤鉄夫さんを代表から降ろして終わるべきものじゃないじゃないですか。

 また、公明の参院側は温度が異なります。竹谷さんは「参院議員が中道にいない状況は国民にとって非常に分かりにくい。一つの政党になっていくことが望ましい」と述べており、合流を前に進めたい意向は明確です。しかし公明党は3月の臨時党大会で、統一地方選では「公明党は公明党として」独自候補を擁立する方針を表明しており、言葉と行動の間には隔たりがあります。日経新聞は「3党に分かれた体制を続けるのは中道にとって『苦渋の一択』だった」と報じており、中道側が主導権を持てない構図が透けて見えます。つまり、公明党は創価学会や地方政治に重きを置く事情と、参議院の選挙方式もあって、地方組織と衆議院、参議院で、考え方や条件が全く異なる組織を内包しているとも言えるわけです。

 足並みの乱れは、すでに選挙の現場でも表面化しています。5月14日に告示された新潟県知事選がその象徴です。柏崎刈羽原子力発電所の再稼働が主要争点となるなか、公明党の県本部は自民・維新・国民民主と相乗りで現職の花角英世さんを支持した一方、立憲の県連は社民党らと組んで新人の土田竜吾さんを支持しました。国政では同じ「中道」の旗の下にいるはずの立公両党が、県知事選で真っ向から対立した形です。これは、自由民主党でよくある保守分裂や不戦敗のメカニズムよりも根深い問題があることを示します。というか、そのぐらい中道がきちんと説得して「制圧」しないと駄目じゃないかというのは当然のことで、言い方を変えれば中道改革連合の党本部は党組織のガバナンスすら掌握できてないということを意味します。そして、中道はこの選挙で支持候補の表明自体を見送り、党として沈黙するしか手がない状況でした。小川さんが秋田で地方行脚をスタートさせた翌日のことです。

 小川さんは「3党が片輪走行し続けることには限界がある」と自ら認めています。この言葉は的を射ています。そりゃそうだと思うんですよ。が、問題はその「限界」を超える手立てが見えないことです。統一地方選では立民も公明も独自候補を立て、中道は「3党の議席の最大化」を掲げて支援に回ります。つまり、中道という党が存在しながら、統一地方選の実態は3党がそれぞれ別々に、ときには互いに対立して戦う形になります。有権者の目には、新党ができたのかできていないのか、その党は何をしているのか、という混乱だけが残ります。もっと言えば、やると決めたからにはさっさと合流しろよ、そのうえで党勢回復の議論をしろよ、自由民主党には公約を守れという割に、お前らは選挙目当てで野合しておいて目の前の選挙で負けたら腰砕けになるだけの連中なのか、と言われることになるわけでして。

 そして、中道の存在感が薄れれば、高市政権・維新という右派ブロックへの対抗軸という発足の大義も霞んでいきます。かつて野党と言えば現状批判勢力でオール左翼だった時代から、まだ抜け出せていないようにも思うのです。参院合流の議論は統一地方選後に改めてということになりますが、そのとき立民が同じ態度を続けるなら、中道はいつまでも「衆院議員だけの49人の党」という中途半端な存在にとどまります。竹谷さんが「塊を大きくする歩みを着実に進めている」と強調したこととの落差は、いまのところ一向に埋まっていません。

 すべてがこんな状況なので、むしろ外野で観ているこっちのほうがジリジリする展開になっています。いわゆる健全な批判勢力としての野党が民主主義に与える価値は大きいのは間違いないのですが、現状の国会を見ている限り、一強多弱の政治環境が日本の政治をむしろ停滞させているという面はどうしても大きいよなあ… と思わざるを得ないのです、残念なことに。

人間迷路 Vol.513 迷走する中道改革連合のことを思案しつつ、経産省の思惑をあれこれ詮索したりGoogleが検索をAIに全振りしつつある件などに触れる回」(2026年5月29日発行)序文より

山本一郎メルマガ『人間迷路
ネット業界とゲーム業界の投資界隈では知らぬ者のない独特のポジションを築き、国内海外のコンテンツ制作環境に精通。日本のネット社会最強のウォッチャーの一人であり、また誰よりもプロ野球とシミュレーションゲームを愛する、「元・切込隊長」こと山本一郎による産業裏事情、時事解説メルマガの決定版!

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山本一郎(やまもといちろう)
1973年、東京都生まれ。96年慶應義塾大学法学部政治学科卒業、新潟大学法学部大学院博士後期課程在籍。社会調査を専門とし、東京大学政策ビジョン研究センター(現・未来ビジョン研究センター)客員研究員を経て、一般財団法人情報法制研究所上席研究員・事務局次長、一般社団法人次世代基盤政策研究所研究主幹。著書に『読書で賢く生きる。』(ベスト新書、共著)、『ニッポンの個人情報』(翔泳社、共著)などがある。ブロガーとしても著名。
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