数年後に改めて観光地としての真価が問われる京都

2023/12/11 08時35分公開 / 2023/12/08 11時37分更新

高城未来研究所【Future Report】Vol.651(2023年12月8日)近況


今週は、京都にいます。


紅葉が始まるこの時期には、さぞかし観光客が多いのだろうと覚悟していましたが、そこまでの人出はありません。

確かに駅前ではそれなりに観光客が目立ちましたが、田の字地区内では数年前に多くいたインバウンドの姿を見る事はほとんどありませんでした。


これには、幾つもの理由があります。


まず、中国本土からの観光客が激減しています。

報道等では、実質的にいまだゼロコロナ政策が続いているためだと言われますが、実際は中国バブルが弾けた事により、急速に景気が悪化している様が見受けられます。

日本も1990年にバブル経済が弾けた後の数年間は、海外旅行に行く人たちが大幅に減り、しかし、時の政府が航空旅行業界をはじめとする経済界から泣きつかれ、230兆円もの公的資金を注入した上、膨大な補助金を何年も発行して一時凌ぎを続けました。

そのツケがいまだに続いており、中国政府は同じ過ちを行わないよう、日本を反面教師として国民に厳しい態度で接しています。


そもそも中国では土地はすべて国有で、国民は土地を所有することはできません。

国民は土地の「使用権」を買うのですが、一括払いが必要なため、個人が銀行やシャドウバンキングなどからお金を借りて次々と投資を行いました。

合わせて、金融緩和の影響もあって投資熱が過度に高まり、中国中央政府が規制に乗り出しました。

その結果、不動産ディベロッパー、銀行やシャドウバンクなどの金融機関、認可を続けた地方政府、借入金が多い個人とドミノ倒し状態になってきたのが現在です。

先月も中国のシャドーバンク「中志企業集団」が、約5兆3千億円の負債で実質的に破綻したばかりです。

このような影響から、中国本土から日本へ訪れる人が激減しているのです。


また、ゼロコロナ政策を続けていた中国政府は、今年8月から中国人観光客の日本への団体旅行を約3年半ぶりに解禁しましたが、原発汚染水の問題を大々的に報じていることもあって、様子を伺う人たちがいまだ大勢います。


一方、台湾や香港、韓国からの訪日客は戻ってきており、彼らは京都の流儀を数年間でソーシャルメディアから多く学んだため、ペラペラで派手な化繊の着物を着て街を闊歩するような事はありません。

あの「なんちゃって和装」は、観光客用のコスプレだと理解しており、街中で軒を連なっていたレンタル着物屋は、コロナ禍もあってほぼ全滅しました。


オーバーツーリズムの一端となっていた民家に間違えて入る輩もいなくなり、うるさかったキャリーケースをガラガラ引き、バスや地下鉄二人分占拠していた人たちも、事前に次のデスティネーションへ荷物を送る事を覚えたため大幅に減っています。

さらには、星付きと言われる和食店も「どこも似たような味」であることから、より京都人が日常的に通う庶民的な店へと飲食トレンドは移っており、この数年で明らかに京都へ訪れるインバウンドは成熟している事がよくわかります。


おそらく来年いっぱいでコロナ禍と中国バブルの反動も治り、再来年あたりに観光地としての真価が問われることになるだろう京都。

実際は、為替や世界の景気動向、そして日本ではまだまだ高騰を続ける不動産価格次第だろうな、と思う今週です。


いま、京都の紅葉は見頃です!


(これはメルマガ『高城未来研究所「Future Report」Vol.651』の冒頭部分です)


高城未来研究所「Future Report

高城未来研究所は、近未来を読み解く総合研究所です。実際に海外を飛び回って現場を見てまわる僕を中心に、世界情勢や経済だけではなく、移住や海外就職のプロフェッショナルなど、多岐にわたる多くの研究員が、企業と個人を顧客に未来を個別にコンサルティングをしていきます。毎週お届けする「FutureReport」は、この研究所の定期レポートで、今後世界はどのように変わっていくのか、そして、何に気をつけ、何をしなくてはいけないのか、をマスでは発言できない私見と俯瞰的視座をあわせてお届けします。


高城剛 プロフィール

1964年葛飾柴又生まれ。日大芸術学部在学中に「東京国際ビデオビエンナーレ」グランプリ受賞後、メディアを超えて横断的に活動。 著書に『ヤバいぜっ! デジタル日本』(集英社)、『「ひきこもり国家」日本』(宝島社)、『オーガニック革命』(集英社)、『私の名前は高城剛。住所不定、職業不明。』(マガジンハウス)などがある。 自身も数多くのメディアに登場し、NTT、パナソニック、プレイステーション、ヴァージン・アトランティックなどの広告に出演。 総務省情報通信審議会専門委員など公職歴任。 2008年より、拠点を欧州へ移し活動。 現在、コミュニケーション戦略と次世代テクノロジーを専門に、創造産業全般にわたって活躍。ファッションTVシニア・クリエイティブ・ディレクターも務めている。 最新刊は『時代を生きる力』(マガジンハウス)を発売。

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