ヤマダ電機積立預金(住信SBIネット銀行ヤマダネオバンクシテン)の真価が伝わらない件
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【人間迷路 Vol.459より】
不動産でも特に建て替えの多いワイら多棟ボロアパート経営者界隈300人ぐらいは大盛り上がりだった本件、このカラクリがピンズドで眉間にヒットして悶絶しているのにあまりTwitter(X)では指摘されず、むしろ馬鹿じゃねえのぐらいの扱いになっています。
ああ… まあそうなのかな…。
ヤマダ電機積立預金|ヤマダNEOBANK
確かに年度ごとに修繕関係で何百万、何千万と泣きながら補修している大家筋と、数年に一度引っ越しや出産のごとに買い換える程度の一般的なご家庭との間でポイント積立のアレがナニであることは仕方がないのかもしれません。
いま二階建見たら、元本保証と満期ポイント金利ばかり話題にしていて… そう… という感じなんですよね。もちろん気になるのは「予告なく変更または中止となる場合があります」という契約文言ですが、ただ本件は当然のことながら金券同等物を利用した金融商品に該当し、裏書が住信SBIネット銀行ですので、本当に予告なく変更または中止されて勧誘時の金利や元金が保証されなかったり、店舗ごとドロンしたりしても金融庁というかさいたま経由でロボコンパンチが飛んでいくタイプのネタですから、そこは震えて待てという感じではないかと思います。
ヤマダ積立預金(住信SBIネット銀行ヤマダネオバンク支店)、元本保証ノーリスクで年利18%超のお金が落ちてると祭りに
アカウントあたり複数口購入可能なのも、おそらくは量販店経由でオーナーシップ調達をする集合住宅が、いままではヨドバシカメラなどで大口を取る際にヨドバシ保証を挟むからです。単純に、ざっくり年20台エアコンがいかれて修理か全替えかするとして、かつてメーカー直でも取り付けはユーザー側、保証もメーカー保証まで、点検修理交換も自前でやらないといけません。死んじゃう。しかも、ボロアパートだと盗難や破損が多いこともあって保険会社もあんまり嬉しそうな顔してくれません。
なので、年数十台以下の規模の集合住宅野郎からすればベンダー(量販店)を挟んで保証つけてぶん回し、どうにもならないときは損保で一部損害を補填というやり方ぐらいしか方法がないのです。敷金? 家賃保証会社? いやいや、生活保護対象者が月5万円のお部屋から10年住んでご退去されるときだいたい内装は全損なんですよ。据え付け家電にいたっては… というレベルなので、大手不動産賃貸が自前で補償も回せるぐらいの規模ならやっていけるかもしれないですが、私らクラスでは当然無理です。無理無理。
なので、ヤマダ電機が本当にそういう金融商品引っ提げて本丸に入ってくるなら、これは全力でいいんじゃないかと思います。設備、据え付け家電の年破損率ってだいたい7%ぐらいで見ているボロ大家多いでしょうからね。
SBI住信も、こんなストレートな施策やったらB/Sの右と左で順調にカネが積み上がって膨らんでいくんじゃないかと心配なんですが、裏書となるポイント資産を持っているユーザーががっつりヤマダ電機に流れれば充分ペイで、それ以上に利益を出せると思っているヤマダ電機の覚悟に乗っかったとかなんじゃないですかね、知りませんが。
地味に気にしているのは、このレートで裏書となる商流をヤマダ電機が掴むとなると、メーカーごと破損率から家電メーカーに対する値引き交渉どころかアカン家電(輸入か国内かは問わず)は排除してくるんじゃないかと思います。特にファミリー向けドラム式洗濯機やエアコンの類はな。
あと私はもう辞めちゃったけど産廃業界的にもベンダー(量販店)経由の家電リサイクル市場は頭打ちな分、特定メーカーの処理物が数年で増えてきてくれるのなら中身もまあまあ分かっているのでウェルカムだと思います。出口を取りに行くんかね。
そうなってくると、リテールや個人に強く、在庫管理を徹底してネット販売に強みを持ち始めたヨドバシと、郊外・集合住宅向け・そう大口ではないまとめ需要に強いベンダー王としてのヤマダ電機という棲み分けになっていくのでしょうか。ヤマダ電機の都市型店舗はガラガラだけど、随分前に(コロナ前だったか)ヤマダ電機の人と飯食ってたら「売上ゼロでも仕方ないと思って運営してますよ」なんて話をしてたのはそういうことなんだろうなあと。
実際、こんなの流れてきて思わず笑ってしまいましたが、ZOZO前澤友作さんの非公開株で上場未定のカブアンド社なんてヤマダ電機のガチ金融商品の前には素粒子レベルまで分解される勢いで木っ端みじんになるやつですね。
おはヤマダざいます pic.twitter.com/6rN1bkMXFc
— ちゃわんご@投資の沼 (@chawan_wabita) November 28, 2024
まあ、前澤勇作さんのアレは私らのような人間は市場の外で考えているとは思いますが、間が悪いというか、割と残念というか。
とはいえヤマダ電機も追随されるとどうなるかとか、本格的に国内建て替え需要が集合住宅ごと蒸発するぐらい景気が悪くなるとこの仕組みはめっちゃ負担になるかとは思いますが… 預かりポイント資産が膨らんだら、住信SBIと合併してヤマダ住信SBIネット銀行とか訳の分からない金融機関に統合されていくんですかね。いや、そのぐらいインパクト出して欲しいと願ってますよ。ええ。
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「人間迷路 Vol.459 ヤマダ電機積立預金の真価を熱く語りつつ、匿流対策の現状やオーストラリアの未成年SNS利用禁止法案の話題に触れる回」(2024年11月29日発行)序文より
山本一郎メルマガ『人間迷路』
ネット業界とゲーム業界の投資界隈では知らぬ者のない独特のポジションを築き、国内海外のコンテンツ制作環境に精通。日本のネット社会最強のウォッチャーの一人であり、また誰よりもプロ野球とシミュレーションゲームを愛する、「元・切込隊長」こと山本一郎による産業裏事情、時事解説メルマガの決定版!
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山本一郎(やまもといちろう)
1973年、東京都生まれ。96年慶應義塾大学法学部政治学科卒業、新潟大学法学部大学院博士後期課程在籍。社会調査を専門とし、東京大学政策ビジョン研究センター(現・未来ビジョン研究センター)客員研究員を経て、一般財団法人情報法制研究所上席研究員・事務局次長、一般社団法人次世代基盤政策研究所研究主幹。著書に『読書で賢く生きる。』(ベスト新書、共著)、『ニッポンの個人情報』(翔泳社、共著)などがある。ブロガーとしても著名。