【告知】4月3日、日本アニメ産業の持続的発展に向けたシンポジウムを開催します
2026/04/01 08時30分公開
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【人間迷路 Vol.506より】
この年度末のクソ忙しいところでシンポジウムの告知をするわけでありますが、頑張って日々を生き抜いております。
ついに市場規模3兆3,800億円を超え、いまや日本の基幹産業として世界から注目を集めるアニメーション産業。その一方で、制作現場への収益還元の不足、深刻な人材不足、海外市場での交渉力の弱さといった構造的な課題は依然として解消されていません。
そんなわけで、このたび一般社団法人日本動画協会、一般財団法人情報法制研究所(JILIS)、映像産業戦略推進研究会(VIS研究会)の共催により、こうした課題を正面から議論するシンポジウムを開催いたします。
日本アニメ産業の持続的発展に向けたシンポジウム
― 人材育成と海外市場拡大の両輪で描く成長戦略 ―
(会場・オンライン同時開催)
よく考えたらコンテンツ産業関係の現場調整をはじめてからすでに12年、いわゆる「意味のある政策」には各位相応の努力はあったかと思うものの、そもそも自由にやってきたから競争力があったコンテンツ産業、特にアニメなどのポップカルチャーは役所が予算もって出てきても「こっち見んな」ってなるわけですよ。にわかに「アニメ産業は自動車産業に次ぐ輸出産業になったんで、政府としても振興するよ」といってもコンテンツなんて政策による支援とはもっとも無縁なところにいた、いわば経済のメインストリームではない産業でしたからね。
とは言えども、著作権法の厳格適用が世界的に求められ始め、世界のIP戦略において、特に海外での展開では海賊版による被害が大きくなる一方、新たな技術革新として生成AIが興隆しました。その足元では、アニメ制作の現場では人口減少に伴って中国や韓国への依存なしには制作が追いつかない状況になったうえ、人材採用や育成が目下最大の課題になってきたわけであります。
それもあって、漫画などを原作とした日本のアニメをジャパニメーションとして世界に売り出していくことだけでなく、世界で制作し世界で売っていく仕組みにしていかないといけないよなって流れになってきたけどどうしよう、といったところです。
他方で、役所で官僚の皆さんと話してると「やる気はあるんだが、どうしたらいいんだかよく分からない」ということで、コンテンツ産業の海外市場規模を、2024年の約6兆円から2033年までに20兆円へ拡大する目標を掲げる割にたいした予算も投下されずに来ました。経済産業省では国産半導体を盛り上げるべくラピダス一社に1兆円を超える政策支援を行うのに、実際外貨をいま稼いでいるアニメ産業への支援という点でははした金しか投下されていないのが現状です。
かたや、出版社などでは「どうせ原作作りに公費突っ込んでもろくなことにならんでしょ」という考えも強いでしょうし、アニメ業界でもいま儲かってる会社と昔ながらの制作で頑張ってきたけど採算面でどうにもならないスタジオとではアニメ制作従事者の皆さんへの待遇も雲泥の差が合ったりもします。これを同じ「アニメ業界」というハコに入れて一緒くたで対策を打てるほど、アニメ産業は一枚岩でもないという話になります。
また、日本のアニメ産業は目の肥えたアニメファンによって独自の進化を遂げた分、他国とは異なる発展をしてきたのが独自性を担保している反面、制作技法では効率化・標準化がむつかしい面があり、カネと制作陣を突っ込んでもすぐに何かできてくるという仕組みとは程遠いのが現状です。量産すればそれで良いのかというわけでもなく、結局はファンを惹きつけるコンテンツをどう作るのか、良質で好まれるものを作り続けながら世界市場にも上手く進出して売り上げをどんどん伸ばしていかなければならないという経営の問題になりつつあるのが現状です。
特に一枚岩というわけでもないアニメ産業が、なぜか自動車やゲーム産業と並ぶ外貨の稼ぎ頭に祀り上げられてしまったのもまた仕方ないのかなと思いつつ、最近は「アニメは儲かる」ということで業界への参入も急に増えてきている現状も踏まえまして、ぜひ多くの皆さまと一緒に考えていけるシンポジウムにしたいと存じます。
今回は特に各社さんの赤裸々なご事情を踏まえ、また、人材育成・確保と海外進出についての演題が多くなっており、まさにいまのアニメ産業のいまを考えた課題について取り上げていきたいと考えております。私もモデレーターとして参画させていただきますが、ひとつよろしくお願い申し上げます。
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「人間迷路 Vol.506 日本アニメ産業発展に向けたシンポジウムを告知しつつ、AI時代のWebが本当にヤバいという話やイマドキの10代のAI利用実態などに触れる回」(2026年4月1日発行)序文より
山本一郎メルマガ『人間迷路』
ネット業界とゲーム業界の投資界隈では知らぬ者のない独特のポジションを築き、国内海外のコンテンツ制作環境に精通。日本のネット社会最強のウォッチャーの一人であり、また誰よりもプロ野球とシミュレーションゲームを愛する、「元・切込隊長」こと山本一郎による産業裏事情、時事解説メルマガの決定版!
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山本一郎(やまもといちろう)
1973年、東京都生まれ。96年慶應義塾大学法学部政治学科卒業、新潟大学法学部大学院博士後期課程在籍。社会調査を専門とし、東京大学政策ビジョン研究センター(現・未来ビジョン研究センター)客員研究員を経て、一般財団法人情報法制研究所上席研究員・事務局次長、一般社団法人次世代基盤政策研究所研究主幹。著書に『読書で賢く生きる。』(ベスト新書、共著)、『ニッポンの個人情報』(翔泳社、共著)などがある。ブロガーとしても著名。
山本一郎メルマガ「人間迷路」編集部