そろそろ真面目に「クレジットカードのコンテンツ表現規制」に立ち向わないとヤバい
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【人間迷路 Vol.444より】
某火鍋の妖精アカウントにこんな記述があったところ、いろんな方面から「これ何やねん」というお話を頂戴するようになりました。
カード会社による決済BANに関しては、2018年以降、自民党筋にも外務省にも掛け合いましたがなかなか大変で、グズグズしているうちに完全にタイトルでの機械判断と一部目視でのBANが進んでしまい手遅れになりました。内々では勉強会を繰り返してきましたが、もう無理なので一般にも解放したいと思います
— 火鍋チャンネル(ヨッピー本人) (@hinabe_ch) June 3, 2024
まあ文字通りの意味なんですが、カード会社が悪者だとか、検閲に当たるのでどうにかしろなどという受け手側の論理とは別に、クレジットカード会社も決済を担う重要なインフラとして日本でサービスをしている限りにおいては、公共性、透明性、納得性をきちんと担保してほしい思うわけです。
ここには、最近憲法が定める私人間効力の延長線上に、デジタル立憲主義的な考え方も出てくる中で、政府は法の下の平等に対して障害となっているプラットフォーム事業者の実態に対して適切に対応するべきだという議論があります。私も、個人のTwitterアカウントをBANされたままなので裁判をやっているんですけど、これらは不法行為ではなく契約行為に当たる問題なのだから東京地裁からはカリフォルニア州の法律が適用されるのではという見解を出されて、日本人が日本で日本語のサービスを受けているのに日本の法律・消費者行政の枠内で対処されないというのはどういうことなのかという話を申し立てていて、これは最高裁判所まで行くべきものなんだろうなあと思っているところでした。
同じような話は、日本で合法に流通しているコンテンツに対して、仮にそれがエログロ的な同人作品であったとしても、国内では表現の自由の元で決済されるべきはずなのに、クレジットカード会社の考課として不適切とされる文言や内容が含まれるものは決済しないのであると一方的にREJECTされたり店舗ごと決済BANされてしまうということが起きます。国内で合法であるからには、適法に事業を営んでいる事業者や流通せしめるべきコンテンツが海外の事業者の判断でキャンセルされ、これに対して、国内で制裁解除の申し立てもできないというのは日本国内の法が法として機能していない状態なのではないかとも思うのです。
さすがに拙いでしょうということで、2019年からクレジットカード会社によって取引拒否されたコンテンツについての問題をずっと討議してきて、JILISでもこの問題を取り上げてきましたが、さすがに抜き差しならないことになってきたなあということで、立ち上がっていきたいと思っています。
日本のフェイクニュース対策と民主主義
また、これと並行していま問題となっているのはフリーランス法が新しく立ち上がっているにもかかわらず、なおクリエイターなど文化的資産の構築に不可欠な仕事に携わる人たちが、粗悪な労働環境で放置されてしまっているという現実があります。適切な給料や健康保険などの社会保障を享受できずに低賃金長時間労働に従事させられたり、傷病で働けなくなった後で復帰しがたい社会環境のまま放置されている点についても充分に考慮される必要があると思っています。
いわば、フリーランス、非正規雇用の人たちはもちろんこれからは諸契約や健康保険、年金にも守られる就業環境が整っていくことが期待される反面、いわゆる労働組合的な観点からはフリーランス、非正規雇用という扱われがたい属性であるがゆえに放置されてしまった面があります。ここをどうにかしたいということで、2020年ごろから知財本部やクールジャパン方面にはゆるゆると政策提言や働きかけをしてきたものの、何かあんまりそういう方面にはやる気が無さそうなので、これもまたできる範囲でちゃんと立ち上がろうかと思っているところです。
これらの問題は、フリーランスや非正規雇用の人たちが置かれている現状が不利であるか、不利であることにそもそも気づいていない人たちもたくさんいる中で、ギルド的な互助組織が不在すぎてずっと放置されてきた面があります。こういう人たちは低賃金なうえに結婚することもままならず、未婚・少子化の割合が極めて高い属性であることも踏まえて、なんかできないものなのかなあとずっと思ってたんですよね。
だいたいそういうことなので、いろいろと活動やイベントを立ち上げていきたいと計画をしていますので、ご関心のある方も興味本位の方もぜひお付き合いいただければ。
よろしくお願い申し上げます。
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「人間迷路 Vol.444 メルマガタイトル」(2024年6月19日発行)序文より
山本一郎メルマガ『人間迷路』
ネット業界とゲーム業界の投資界隈では知らぬ者のない独特のポジションを築き、国内海外のコンテンツ制作環境に精通。日本のネット社会最強のウォッチャーの一人であり、また誰よりもプロ野球とシミュレーションゲームを愛する、「元・切込隊長」こと山本一郎による産業裏事情、時事解説メルマガの決定版!
山本一郎主催の経営情報グループ「漆黒と灯火」
真っ暗な未来を見据えて一歩を踏み出そうとする人たちが集まり、複数の眼で先を見通すための灯火を点し、未来を拓いていくためのサロン、経営情報グループです。
山本一郎(やまもといちろう)
1973年、東京都生まれ。96年慶應義塾大学法学部政治学科卒業、新潟大学法学部大学院博士後期課程在籍。社会調査を専門とし、東京大学政策ビジョン研究センター(現・未来ビジョン研究センター)客員研究員を経て、一般財団法人情報法制研究所上席研究員・事務局次長、一般社団法人次世代基盤政策研究所研究主幹。著書に『読書で賢く生きる。』(ベスト新書、共著)、『ニッポンの個人情報』(翔泳社、共著)などがある。ブロガーとしても著名。