健康法に「正解」はない

2026/04/13 08時30分公開
高城未来研究所【Future Report】Vol.773(2026年4月10日)近況
今週は、東京、群馬、静岡をまわっています。

少し前まで静岡県は、外国人宿泊客に占める中国人比率が全国最高の45%もあり、2019年には71%にも達していました。
富士山と「ゴールデンルート」(東京〜京都・大阪)上に位置するため、中国団体ツアーの定番中継地だったのですが、日中関係悪化に伴い、現在、中国人観光客は激減。
確かに街を歩いても中国人はじめ、インバウンド全体が静岡では明らかに減ったように感じますが、一方、東京都心部を歩くと、スペイン語、イタリア語、フランス語、ドイツ語、英語、中国語、韓国語、タイ語、そしてヘブライ語までもが入り混じり、ここがどこの都市なのか一瞬わからなくなるほどインバウンドで溢れかえっています。
直近のデータを調べると、かつて「ゴールデンルート」と呼ばれた東京・京都・大阪を巡る周遊型の旅は、すでに過去のものになりつつあり、今や多くの旅行者が東京だけで一週間、十日と滞在するスタイルが人気を博しています。
理由は単純、東京の中だけで「日本」を構成するすべてが揃ってしまうからで、特にこの傾向はリピーターに顕著に見られます。
冬の北海道を除けば、寿司も、ラーメンも、神社仏閣も、最先端のファッションも、深夜まで開いているバーも、ミシュラン星付きの店も、コンビニのスイーツも、すべてが半径数キロ圏内にありますので、わざわざ新幹線に乗って移動する理由が相対的に薄れているのです。

その結果、東京のホテル代が異常な水準まで高騰。僕が定宿にしているいくつかのホテルも、ここ二、三年で価格が二倍以上になり、あわせて東京の不動産価格高騰の余波が、ホテル代にもダイレクトに跳ね返っています。
背景にあるのは、REITなどの投機マネーだけに限らず、地方のインフラが急速に崩壊しつつ東京一極集中が強まっているという、誰もが薄々気づいている現実も見逃せません。
今週も群馬や静岡を巡って実感しましたが、現在、急速に路線バスは運転手不足で減便が続き、地方の病院は次々と統廃合され、商店街はシャッター街と化し、自治体そのものが存続の危機に瀕している地域も少なくありません。
水道管の老朽化、橋梁の劣化、公立学校の閉校など、これらが同時並行で進行している結果、人々は「住み続けられる場所」を求めて都市部、とりわけ若年層は東京へと流入し続けているのです。
つまり、東京一極集中は、もはや経済合理性の問題ではなく、生存戦略なのです。

しかし、通貨ユーロから見た東京のホテル代は、依然として「適正価格」、いや、むしろ「割安」と言ってもいい水準にとどまっています。
一泊7万円のホテルは、ユーロに換算すれば400ユーロ前後。
同等のクオリティの部屋をパリやロンドン、ミラノで探そうとすれば、その倍はかかり、ドルやユーロを稼いでいる旅行者にとって、東京は今でも、世界で最もコストパフォーマンスの高い大都市のひとつですが、日本円という通貨の中だけで生きている人々にとってだけ、この物価は「異常」に映ります。
7割超というインバウンド・リピーターが増え続けるのも理解できるところで、今後、この傾向は、日々ダイナミックプライシングが適用されるホテル代にとどまらず、あらゆる領域へと広がっていくでしょう。
中国人が土地や水源を買うのは問題だと取り上げる一方、米国人が土地や水源を買うのは本当に問題がないのか、必ず問われる日が訪れます。

さて、毎年春頃から食事をスイッチしていますが、今年は自身の超高深度全ゲノムシークエンスの結果から、抜本的に変えることになりました。
一般的な遺伝子検査が数十万から数百万のSNPsを見るのに対し、超高深度全ゲノムシークエンスは三十億塩基対のすべてを、しかも複数回読み込むことで、極めて高い精度で個人の遺伝的特性を浮かび上がらせます。
その結果は、想像していた以上に僕の食生活とサプリメントの選択を根底から変えることになりました。

まず、食事です。これまで、いわゆる「グルテンフリー」や冬季は「玄米中心」の食生活を、健康のために良いものとして緩やかに実践してきました。
しかし、超高深度全ゲノムシークエンスの結果を読み解いていくと、僕の体にとっての優先順位は、グルテンフリーでも玄米食でもなく、「古代小麦」であることが見えてきました。僕のHLA-DQ2.5やDQ8といったセリアック病関連の遺伝子は陰性で、グルテンに対する自己免疫的なリスクは事実上ゼロ。
一方で、血糖応答に関わる複数の遺伝子であるKCNJ11、SLC30A8、ADCY5にホモ接合の変異があり、膵β細胞の機能に制約があると判明しました。
つまり、食後の血糖スパイクを抑えることが、僕にとってはなによりも重要であり、グルテンによる腸内環境への影響よりも血糖値コントロールが優先されます。

加えて、もうひとつの理由があります。
最近、市販されているグルテンフリー製品の品質が、目に見えて落ちているのです。
かつては選択肢が限られていたものの、原材料に対する誠実さがありました。ところが、需要の拡大とともに参入企業が増え、米粉やタピオカ粉、コーンスターチを過剰に組み合わせ、結着剤や乳化剤を大量に使い、どう考えても身体に良いとは思えない製品が数多く出回るようになりました。

さらにサプリメントについても、大きな変化がありました。以前は、マルチビタミン、オメガ3、ビタミンD、マグネシウム、プロバイオティクスといった「ざっくりとした健康志向」の良質なサプリを、なんとなく毎日摂っていました。
しかし、超高深度全ゲノムシークエンスの結果を最適化していくと、それがいかに非効率な選択であったかがよくわかります。

僕のゲノムで最も特徴的だったのは、エネルギー代謝の司令塔と呼ばれるPPARGC1A(PGC-1α)遺伝子領域のメチル化が、同世代平均より明確に高いことでした。
これは、ミトコンドリアの新生と脂質酸化を担う中枢的な転写共役因子の発現が、後天的に抑制されやすい体質であることを意味します。
同時に、KCNJ11、SLC30A8、ADCY5という膵β細胞の機能に関わる三つの遺伝子すべてにホモ接合の変異があり、食後の血糖スパイクに対する緩衝能が遺伝的に制約されています。
この「ミトコンドリア×膵β細胞」という二重の代謝的脆弱性に対しては、一般的なマルチビタミンでは届きません。
そこで選んだのは、PQQ(ピロロキノリンキノン)とミトコンドリア標的型のMitoQ、そしてウロリチンAです。PQQはミトコンドリア新生のシグナルを直接叩き、MitoQはCoQ10をミトコンドリア内膜に選択的に送り込み、ウロリチンAは機能の落ちたミトコンドリアを選択的に分解するマイトファジーを促します。PGC-1αの発現低下を、上流からではなく、下流のオルガネラ側から補う戦略です。

ALDH2のヘテロ変異とGSTT1・GSTM1のダブルヌル(解毒系グルタチオン転移酵素が生まれつき欠損している体質を意味します)という組み合わせに対しては、一般的に語られるNACではなく、リポソーム型グルタチオンを直接補充する形に切り替えました。
GSTが欠けている以上、前駆体をいくら入れても合成効率が上がらないためです。あわせて、アセトアルデヒドとカルボニル化合物の非酵素的な無毒化を担うL-カルノシンを朝に摂取しています。

また、神宮前統合医療クリニックの「超高深度全ゲノムシークエンス」検査では、現在の状況を調べるために「DNAメチル化プロファイリング」も全員に行っており、僕の結果から、HTR2AとNPSR1 Y206H、そしてPER2領域のメチル化パターンから浮かび上がる「短眠でも機能するが、睡眠の質が崩れると一気に落ちる」体質に対しては、就寝前にアピゲニン(カモミール由来のフラボノイドで、GABA-A受容体のベンゾジアゼピン結合部位に作用)と、低用量のグリシンを組み合わせています。

メラトニンは0.3mgに抑え、受容体の脱感作を避けるため、週に二日は意図的に休サプリする日を設けています。
MTHFR C677TとA1298Cのコンパウンドヘテロに対する5-MTHFとメチルB12は従来どおりですが、そこにベタイン(TMG)だけでなく、リボフラビン5'-リン酸(活性型B2)を加えました。MTHFR酵素自体がFADを補因子として必要とするため、活性型B2の供給がメチレーション全体の律速を外す鍵になります。これは見落とされがちなポイントです。
結果として、サプリメントの総数はむしろ以前より減りました。「念のため」で飲んでいたものを全て外し、ゲノムが明確に要求するものだけを、吸収経路と体内時計に沿って配置する。サプリメントは、「とりあえずの健康維持」ではなく、「自分という個別の生命体に対する、ピンポイントの介入」に昇華しました。

今回、超高深度全ゲノムシークエンス(+DNAメチル化プロファイリング)が教えてくれたのは、健康法に「正解」などないという、当たり前のことです。グルテンフリーが正しい人もいれば、古代小麦が正しい人もいて、マルチビタミンで十分な人もいれば、活性型でなければ意味がない人もいます。すでに一般論としての健康情報は、もはや過去の遺物になりつつあり、これからの十年は、自分自身のゲノムとAIを介して対話しながら、自分専用の食事とサプリメントを精密に設計していく時代になるでしょう。

東京も春らしくなってきました。
桜も散り、いよいよ夏支度のスタートです!

(これはメルマガ『高城未来研究所「Future Report」Vol.773』の冒頭部分です)


高城未来研究所「Future Report
高城未来研究所は、近未来を読み解く総合研究所です。実際に海外を飛び回って現場を見てまわる僕を中心に、世界情勢や経済だけではなく、移住や海外就職のプロフェッショナルなど、多岐にわたる多くの研究員が、企業と個人を顧客に未来を個別にコンサルティングをしていきます。毎週お届けする「FutureReport」は、この研究所の定期レポートで、今後世界はどのように変わっていくのか、そして、何に気をつけ、何をしなくてはいけないのか、をマスでは発言できない私見と俯瞰的視座をあわせてお届けします。

高城剛 プロフィール
1964年葛飾柴又生まれ。日大芸術学部在学中に「東京国際ビデオビエンナーレ」グランプリ受賞後、メディアを超えて横断的に活動。 著書に『ヤバいぜっ! デジタル日本』(集英社)、『「ひきこもり国家」日本』(宝島社)、『オーガニック革命』(集英社)、『私の名前は高城剛。住所不定、職業不明。』(マガジンハウス)などがある。 自身も数多くのメディアに登場し、NTT、パナソニック、プレイステーション、ヴァージン・アトランティックなどの広告に出演。 総務省情報通信審議会専門委員など公職歴任。 2008年より、拠点を欧州へ移し活動。 現在、コミュニケーション戦略と次世代テクノロジーを専門に、創造産業全般にわたって活躍。ファッションTVシニア・クリエイティブ・ディレクターも務めている。 最新刊は『時代を生きる力』(マガジンハウス)を発売。
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