ニコニコ動画、そしていずれ来るU-NEXTやDMMへのVISA決済BANが描く未来
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大騒ぎになっていたのがニコニコ動画(ドワンゴ)でのVISAカード決済BANであります。
(5/15追記)【重要】Visaでのニコニコプレミアム会員料金の決済一時停止について
個人的にドワンゴ社の川上量生さんとは裁判までやっていた私としては、心の15%ほどが「ざまあw」という成分で占められているわけではないわけではないですが、ただ国内法では合法とされているコンテンツ(中身)の流通の、ごく一部を問題視して、決済BANの中でも割と重めな事業者を指定しての業者BANに至ったというのは重い問題だと思っております。
あんまりボク言いましたよねって書くのもどうかと思いますが、この問題については継続的にヲチはしており、まあ面倒くさいことになったなあというのが正直なところです。
pixivなど同人マンガ界隈で「クレカ決済拒否」が大変な騒動になっている件について
人間迷路 Vol.378 --知らない世界に対して謙虚にやっていくことの大切さを噛みしめつつ、不条理なクレカ取引中止問題や不可解な私的録音録画補償金再浮上のあれこれを考える回
日本のフェイクニュース対策と民主主義
単純に言えば、表現規制の一つの形態として、オンライン上の決済サービスで寡占的で支配的なVISAやMastercardが正面から問題となる商品(オンラインコンテンツ)を名指ししてでBANするようになってきた、というのが正直なところで、この中には、主に同人コンテンツによる取引において適切ではないとされる内容が含まれるものは制限の対象となってきています。これが順次拡大を続け、当初はpixivやアニメイト、DLsiteなどの同人系コンテンツやNSFW界隈だけでなく、規制リストに合致するコンテンツを取り扱う確率の高い事業者については大手出版社でもBANの対象となることが懸念視されています。
強まる「クレカの表現規制」 “アダルトと決済”のこれからはどうなる?
で、まあ「どうしましょうか」と政府、与党内でも議論していたところ、今回ついにDMM本丸やU-NEXTなども対象になる話が表出し騒ぎになる一方、半年前はあんまり想定していなかった生成AIによるアダルトコンテンツの流通自体を差し止めたいという具体的な要請も出始めているので厳しいのではないかと思っているところです。
これはもう、いったん制御不能になっている同人関係のコンテンツに関してはクレジットカードでの決済はできなくなる前提で考えておく必要があるでしょう。これは、ファンアート的なものであっても制限リストに入っているものはすべて引っかかる前提であると言えます。
関係先が与党議員を通じてVISAでこの問題を統括するシンガポールに問い合わせをして社としての結論を聞いたところ、カードブランドのバリューを守る目的としつつも、実際には先般記したカリフォルニア州でのPornHub子会社の広告事業決済を行ったカード会社の責任が州裁判所から認容されたことから、一切の関連ビジネスの決済に対するリスク判断をしたものという話であって、まあそりゃそうですよねとは思います。
しかしながら、先にも述べましたが国内では合法的に流通しているコンテンツが、支配的な決裁手段であるクレカ決済から業者ごとBANされる事態というのはにわかには容認しがたく、プラットフォーム関連規制の中でどう対応していくのかという話に発展していくのは間違いのないところです。
さらに、生成AIや違法広告にまつわるサービスも今後、これらのサービスを決済事業者が幇助したという裁判を起こされかねないことなどから、こちらも決済BANの可能性を示唆する折り返しがあったのは注目するべき事態なのではないかなあと思っております。
で(重要)、さすがにこれはまあ看過できないぐらい大変な問題になりつつありまして、プラットフォーム規制の中でも国民に認められた表現の自由と、私人間効力、デジタル立憲主義に繋がる大きいテーマになってきていると思いますので、俺たちのプライバシーフリーク・カフェで6月以降具体的な話も踏まえてシンポジウムでもやるかなあといったところです。冒頭の宣伝の次の回になりますが、式次第が決まったらまた告知したいと思います! 思います!
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「人間迷路 Vol.441 メルマガタイトル」(2024年5月22日発行)序文より
山本一郎メルマガ『人間迷路』
ネット業界とゲーム業界の投資界隈では知らぬ者のない独特のポジションを築き、国内海外のコンテンツ制作環境に精通。日本のネット社会最強のウォッチャーの一人であり、また誰よりもプロ野球とシミュレーションゲームを愛する、「元・切込隊長」こと山本一郎による産業裏事情、時事解説メルマガの決定版!
山本一郎主催の経営情報グループ「漆黒と灯火」
真っ暗な未来を見据えて一歩を踏み出そうとする人たちが集まり、複数の眼で先を見通すための灯火を点し、未来を拓いていくためのサロン、経営情報グループです。
山本一郎(やまもといちろう)
1973年、東京都生まれ。96年慶應義塾大学法学部政治学科卒業、新潟大学法学部大学院博士後期課程在籍。社会調査を専門とし、東京大学政策ビジョン研究センター(現・未来ビジョン研究センター)客員研究員を経て、一般財団法人情報法制研究所上席研究員・事務局次長、一般社団法人次世代基盤政策研究所研究主幹。著書に『読書で賢く生きる。』(ベスト新書、共著)、『ニッポンの個人情報』(翔泳社、共著)などがある。ブロガーとしても著名。