トレーニングとしてのウォーキング
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高城未来研究所【Future Report】Vol.646(2023年11月03日)近況
今週は、バレンシア、ベニドルム、アリカンテ、バルセロナ、パリ、ドバイ、東京と日々移動しています。
何度かお伝えしましたように、春から秋の渡航シーズンは、ほぼ運動らしい運動をしていません。
それもそのはず、毎日のように小さくても重い機材を持って、足早で移動していたら、それ自体がトレーニング同然だからです。
現代のハブ空港はどこも大きく、取材や撮影およびロケハンと称して旅先であちこち回る日々を送り、Apple Watchが「ワークアウト中ですね。
屋外ウォーキングを記録しますか?」と、勝手に聞いてくるほど早足で動きます。
健常人の歩行速度が歩行バイオメカニクスに及ぼす影響をメタ分析した調査によれば、ある一定以上の心拍をキープしたまま、連続して20分以上歩き続ければ、関節運動学をはじめとするあらゆるパラメータから、健康上優位なだけでなく、負荷による酸化も少ないため、「第一に推奨されるべき運動」と米国医師会が提唱しています。
ウォーキングに限りませんが、あらゆる運動には、必ず「量」と「質」の2つの観点があり、ウォーキングだと「歩数」と「運動強度」がこれにあたります。
強度とはいわゆる刺激のことで、実はこの「運動強度」の視点が、これまでのウォーキングではほとんど見逃されてきましたが、近年、多くの研究から重力に逆らって上下運動する際に起こる刺激が、骨密度の維持や筋肉量の維持、なにより脳へ大きな影響を与えることがわかってきました。
人間の大きな筋肉は下半身に集中しており、成長ホルモンの分泌のためにも下半身のトレーニングは欠かせませんが、ある一定以上の心拍をキープしたまま連続して20分以上の歩行は、成長ホルモンの分泌の面からも優位な運動だと判明しています。
また、頭への刺激も強いことから、ウェイト・トレーニングでは得られない脳の活性化も見込めます。
さらに、心肺能力を測定するためのウォーキングもあります。
日本で見かけることがあまりないのですが、インフルエンザやコロナ等の重症度を測る世界的な指標に「6分間ウォーキングテスト」(6MWT)という簡易試験があります。
簡単に言えば、肺と心臓がどれだけ健康であるかを測定するテストで、主にコロナ陽性者の治療判断に用いられています。
まず、パルスオキシメータをつけて安静時の酸素濃度を測定。
その後、パルスオキシメーターを指につけたまま、部屋の中を6分間歩き、歩行テスト中とテスト後の酸素濃度を記録します。
この結果、例えば酸素飽和度が93%を下回ったり、3%以上低下などの数値の変化から心肺能力を測定する簡易検査で、コストがかからないこともあって世界的に用いられています。
米国や欧州の医師は、コロナやインフルエンザ感染と診断された患者は、少なくともこの検査を1日2回受ける(セルフチェックする)べきだとアドバイスしており、コロナに感染していなくても、肺の健康状態を評価するのに役立つので、適宜調べることオススメしています。
また、トレーニングとしてのウォーキングは、心拍数も重要です。
「220ー年齢」の数式でおおよその最大心拍数を求め、この60〜80%が目標心拍数ですので、20分間下回らないよう注意します。
歩き方としては、自分に合った靴と正しいインソールを用い、腸腰筋を意識しながらできるだけ大股で歩き、この際にハムストリングスやふくらはぎに「伸び」を感じることが大切です。
できれば、気分転換も含め30分程度走りたいところですが、日々移動していると、着替えや準備なども含め、なかなか時間が確保できません。
春から秋は、心拍数を高めることだけ意識して歩行(移動)し、他の運動をほぼやっていませんが、なにより、人は歩くように出来ているので、移動したい!
そんな欲望に突き動かされ、気候の良い時は移動を続けています。
本来、人間は過度なトレーニングなどせず、毒が入ってないか食物を慎重に選び、陽があるうちに水を汲んだり、木の実を拾ったり、狩りをして体を動かす=歩いていただけでした。
時速4.8km/hしか移動できなかった最強の捕食者と形容されるティラノサウルスより早いホモサピエンスの歩行。
捕食されないためにも、時速5km/h以上で歩きましょう!
(これはメルマガ『高城未来研究所「Future Report」Vol.646』の冒頭部分です)
高城未来研究所「Future Report」
高城未来研究所は、近未来を読み解く総合研究所です。実際に海外を飛び回って現場を見てまわる僕を中心に、世界情勢や経済だけではなく、移住や海外就職のプロフェッショナルなど、多岐にわたる多くの研究員が、企業と個人を顧客に未来を個別にコンサルティングをしていきます。毎週お届けする「FutureReport」は、この研究所の定期レポートで、今後世界はどのように変わっていくのか、そして、何に気をつけ、何をしなくてはいけないのか、をマスでは発言できない私見と俯瞰的視座をあわせてお届けします。
高城剛 プロフィール
1964年葛飾柴又生まれ。日大芸術学部在学中に「東京国際ビデオビエンナーレ」グランプリ受賞後、メディアを超えて横断的に活動。 著書に『ヤバいぜっ! デジタル日本』(集英社)、『「ひきこもり国家」日本』(宝島社)、『オーガニック革命』(集英社)、『私の名前は高城剛。住所不定、職業不明。』(マガジンハウス)などがある。 自身も数多くのメディアに登場し、NTT、パナソニック、プレイステーション、ヴァージン・アトランティックなどの広告に出演。 総務省情報通信審議会専門委員など公職歴任。 2008年より、拠点を欧州へ移し活動。 現在、コミュニケーション戦略と次世代テクノロジーを専門に、創造産業全般にわたって活躍。ファッションTVシニア・クリエイティブ・ディレクターも務めている。 最新刊は『時代を生きる力』(マガジンハウス)を発売。