人工知能の利活用と、出力された内容の目利きについて
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AzureにChatGPT的なものを運用するための大量の元データ(教師データ)をブチ込んで回すというのが最近流行り始め、私も試験的に過去に書いた記事を全部放り込んで出力させてみるといろんなことできるじゃんとは思います。
この週末、家庭の用事もあったので全部は参加できませんでしたが、人工知能利活用のテーマでリスク診断についての討議にほんのり参加したり検討したりする中でいろんな知見を得たのも事実です。
例えば、私の関心事で言えば「人工知能を使えばイラストレーター要らなくなるんじゃないの」ってのがあります。実際、ゲーム開発の現場ではシナリオもイラストもBGMも一体で管理できるツールを作ってみようということで、ざっくりこんな感じじゃねーのというCMSやイベント管理ツールなんかを構築した猛者がおりまして、突貫工事三週間でコーディングした割には結構うまくいくんですよ。これ、イベント専のプランナーさんさえ半分にできるんじゃないの。
また、プレイヤーが入力したキーログを使ってFPSなんかではうまいグレード別の「標準的なその強さのプレイヤーの動き」を学習させて、いわゆる接待プレイをするための疑似プレイヤーを用意できる環境が整いつつあります。ドン勝なんて半分以上はBOTが相手だったんですよみたいなノリの世界観になるんじゃないかと思うんですよね。
そうなると、イラストレーターやプランナー何かは特に、人工知能があればそういう人材は要らないんじゃないの、という以上に「そういう人材が育たないんじゃないか」問題なんてのが発生します。だって、上手くない奴はスポイルされて仕事が成り立たないしギャラも払わないのだから、力の足らん奴は全部人工知能に置き換わって失業するだけじゃなく、成長の機会もないじゃないかという。
ただですな、もういまの段階ですでにやらなければならないのは、そういう人工知能吐き出しのアウトプットに対して適切な品評をし、それを売り物になるレベルまで修正するという仕事が別で発生するわけですよ。
例えば、某所で話題になったコレですが、プロからするとこれは「使い物にならん」レベルだけど、GIFぐらいのサイズでネットに転がってTiktokやYoutubeで流れる分には「かわいい」しこれでいいじゃんとなるわけですよ。ただ、本当の意味でカネが取れるコンテンツのパーツに仕上げるには、これ結構途方もない手間がかかる。モアレどうするのとか、髪の毛が不自然だとか、背景も組成し直しだとか、例えばこれが2.5次元ミュージカルとかそういうモノやるときの素材として下請けから納品されてきたらぶん殴って追い返して再納品してもらうべきレベルでもあります。
https://twitter.com/niakonichan8480/status/1645707416258981889
その目利きはどうするのってのと、自分たちが手を動かしてどこまでやれば売り物になるのかを判断するところは、結局まだ人間がやらないといけないであろうし、おそらくいま出回っているジェネレーティブAIで仕事をするとき、品質のところは犠牲にしてでも省力化できる部分はかなり代行できる(かもしれない)というところで終わってしまう代物でもあります。
自分で自分を育てるツールとか言うのも試してみましたけれども、どうなんでしょう。
そういう人間のジャッジ、目利き、見積もりに至るところまで、うまく人工知能が代行してくれれば、かなりのものができるのかもしれないのでそこは期待するのですが、でも皆さんコンテンツの品質は残り2%ぐらいのこだわりの部分にあるんだってこと、よくご存じじゃないですか。人工知能で最大公約数の「かわいさ」までは充分に作れるので、個人的な夜のおかずを無限に生成することはできてもスクリーンサイズで売り物になるようなレベルにまで持っていくには追加コストとそれを支える目利きできる人間が必要であることに変わりはないのです。
だから安心しろ、と言いたいのではなく、その程度の人工知能におまえの仕事が置き換えられて失業するかも知れないってのは、そもそもそういうレベルの仕事で飯を喰っていたんだぞということの証左でもあります。実際、私も良く分からん分野だけどお金をもらっている仕事は何個かありますが、あーこの辺は仕事としてそう遠くない将来無くなるんだろうなあと思うのは、本当の意味で価値を生み出すような目利きや見積もりの仕事をしていない自覚があるからです。
言い換えれば、カネを取れる品質を担保している作業に従事しているのか、きちんと最先端のことをやって目利きや見積もりをする作業に力を注いでいるのかというところが勝負なんじゃないかと思います。
で、人工知能の興隆によって中堅以下の作業がどんどんなくなり、そういう仕事にたどり着けない人が増えるんじゃないかと懸念する人がおるわけですけれども、個人的にはあんまり心配していません。人工知能がモノを作るプロセスを理解していれば、それを逆に人間のほうが学んで品質とそれを支える作業量・技術を学ぶことができるからです。人工知能は仕事を奪うツールであると同時に、人間にとって根気よくモノを教えてくれる教師としても役に立つことでしょう。
むしろ、人工知能の利活用が広がっていけば、過去の素材から何を形成するか、いかなるアウトプットを求めるのかという作家性のところはもっともっと大事になっていくし、そうであるがゆえに、私らが過去に営々と築き上げてきた教師データの素晴らしさを自らが引き出せるチャンスが広がっていくんじゃないかとすら思っております。はい。
画像はAIが考えた『人間とAIとが手を取り合いながら友情を深めている図』です。
https://twitter.com/Ichiro_leadoff