消費税は現役の勤労世帯にとって有利なのに、なぜ反対するのか

2023/11/14 21時19分公開

 「消費税は悪」って、導入した竹下登政権への批判の文脈で左翼マスコミが言い続けてきたからってのが大きいと思うんですよね。

 良く逆進性とか言いますが、そんなの欧州のより高率な間接税であるVATでも起きるし、そもそも日本には低所得者には死ぬほど控除や免除があるじゃないですか。そもそも世帯収入が低い人は社会のお荷物であって、お前らが受けている公共サービスの総額より納税額・税負担率が低いから問題なんですよ。でも生きていくためには生活できるおカネは必要だし、そういう生き方を若い頃はしていたけどだんだん働いているうちに稼げるようになって… ってのもあるから、人生全体の中で収入が多い年齢あり、怪我や病気、育児で働けない歳ありで社会保障はセーフティーネットが大事なんです。

 そのセーフティネットは目的税である消費税が使われております。先日、高橋洋一が目的税なんて言い訳に過ぎないって言ってましたが、あれは高橋洋一が古い税制の仕組みでいまを語っているからであって、いまは税導入の目的が国会でしっかり審議され、この使途のためにこの税金を設けますって議論するから新設する税はほとんど目的税なんすよ。

 そして、消費税は左翼マスコミが悪とし過ぎたので、いまになって、高齢者がいまだ左翼マスコミと結託して消費税を上げさせないようにしてますね。なぜ分かるかって、そういうカラクリを説明してくれる元左翼マスコミの論説委員の人がここ10年の議論の社内議事録を出してくれたからです。その人が死んだら公にしていいというので、早く死なないかなと思って楽しみに待っています。

 なので、現役世代と高齢世代の納税と社会負担を翌々考えると、社会保障と税の一体改革は野田佳彦政権から安倍晋三さんに政権が移ったころの試算はほとんど役に立たなくなっています。あのころより、状況が想定以上に悪くなっているから。

 それを分かってうえで出口論を考えないといけないよねってのは社保審(年金部会)でも出てますが、個人的に「それって出口と言えるのか」って感じはします。税制いじんないといけないんで。

https://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/shingi-hosho_126721.html

 で、どうせ税制いじるなら、現役世代に有利なように、高齢世代は給付の状況が整理できるように(極端な不利を蒙らないように)調整しないといけません。国民負担率はそう高くないんだけど、インフレになって生活者物価は上がっているのに現役世代の可処分所得が減っていれば、それは相対的に貧乏になっていくわけでして、子どもの数は減り、社会は維持できなくなっていくでしょう。

 あくまで思考実験として、考え得るのは「消費税を21%、軽減税率10%ぐらいにし、その代わり、ドーンと大幅な所得減税と社会保険料の引き下げ、そして資産課税を入れる」です。

 消費税は、みんなが使った金の分だけ払います。なので、高齢者は消費税が上がると大変ですが、軽減税率入れてんだから飯や生活必需品以外のものは税金高くかかるんだよバーカということで、余計なものに出費したら罰ゲームになるのは制度上仕方ないと考えます。

 他方、所得税と社会保険料は、かなり下げられる余地があるんじゃないかと思うんですよ。その代わり、都市部に年寄りを寄せて国営姥捨て山を作ったり、介護保険と健康保険制度を維持するためにマトリクス組んだりしないといけないですが。

 で、左翼マスコミがなぜ高齢者に人気があり、若者に人気がなくなってるかという点では、こういう消費税反対的なイデオロギーが、いまだにこびりついてるからだと思うんですよね。消費税反対して利益があるのは高齢者だけです。だから共産党もれいわ新選組も、途中まで若い人増えるかと思ったら一気にジジイシフトしたのも、立憲民主党が消費税反対の旗を降ろして若者の支持を増やそうとしているのもそういう理由です。

 資産課税は、やはり同じ世代は同じ世代で介護のカネを回してくれというのが主眼です。年寄りが同じ世代の年寄りの社会保障料を払うことで世代間格差の解消に資するようにするためには、金融資産をもっている年寄りから社会保障のためにカネを取らないと駄目ですね。いま金融資産を持っている年寄りからこれらを取る方法がないのが問題で、わずかな金を持っている年寄りが死んで相続になるまで税金が取れないけど長生きされてしまってそいつ以外みんな貧乏で公費負担が増えて現役世代が割を食うのはよろしくないと思うんですよ。

 中長期的には、少なくとも2040年以降は、高齢者問題はきれいさっぱりなくなって、後からやってくるのは相当な医者あまりの世の中で子どもが減っている状況でどうしようかっていう新たな人手不足問題です。ゆるゆると、そして回復する兆しもない中で少子化だけが進んでいって、都市機能を維持できない地方が崩壊していきます。たぶん、自治体再々編が起きて、誰からも引き取られない自治体や使われない土地は国に一括領となり、そこに住んでる人たちは公共サービスを受けられない状況になるでしょう。

 衰退ってのはそういうもんです。撤退戦をしましょうという話ですから、おらが村がとか、我が自治体がとか言われても知りませんし、見ず知らずの高齢者を若者が納税して支えるといってもいま以上に限定的なものにならざるを得ません。病院にもその日のうちに診療してもらえるのは特級の民間サービスを契約した個人だけで、救急医療や電力、通信、公共サービスを受けたい人は請けられる地域にだけ住めよなって世界になっていくしかないんじゃないですかね。

 尊厳死や、安楽死の議論は過渡的なものに過ぎず、本質は少子化であり、社会的にどう持続させられるのかは子どもの数にかかっています。だからお前ら自分のためにも社会のためにも結婚しろ、子どもを産め、しっかり教育しろ、それが無理な人たちはちゃんと稼げ、健康に生きろ、動けなくなったら感謝され尊厳のあるうちに早く死ねって感じになっていくのかなと思ってます。

 画像はAIが考えた『あれが約束された大地だと預言者が道を指し示すが、どうみてもたいしたことのない小島で、そもそもそこにどうやって行ったらいいのか良く分からず困惑する皆さん』です。


 1973年、東京都生まれ。96年慶應義塾大学法学部政治学科卒業、新潟大学法学部大学院博士後期課程在籍。社会調査を専門とし、東京大学政策ビジョン研究センター(現・未来ビジョン研究センター)客員研究員を経て、一般財団法人情報法制研究所上席研究員・事務局次長、一般社団法人次世代基盤政策研究所研究主幹。著書に『読書で賢く生きる。』(ベスト新書、共著)、『ニッポンの個人情報』(翔泳社、共著)などがある。ブロガーとしても著名。

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