文字で物事を読んで理解する力が無い人は厳しい

2024/01/18 03時45分公開

 某大学や関係先および専門学校でボランティアの人たちを能登半島地震にお送りするお手伝いをしていたんですが、ほとんどが傷病兵みたいな感じで戻ってきてしまい、人間心のタフさは必要なんだよという話を随所でしております。

褒められて育った子が災害ボランティアをすぐにやめる理由…綺麗事ではない理不尽な世界を生き抜く知恵の不足 https://bunshun.jp/articles/-/68379

 まあ、私のような半世紀生き抜いた海千山千ジジイが諭すのは人としてよろしくないかと思いつつ、ちょっと気になったのがボランティアに行く学生たちの「文字で情報を読み解いて状況を判断する能力」が欠けているケースが少なくなくあった点です。

 もともと人間の知能には文字などの情報を司るワーキングメモリーのほかに空間認識能力やパターン推理能力などが組み合わさって指数化されているものなのですが、例えば、被災地に関する情報として「AはBである」という文字情報があったとき

1) AがBであるという認識ができない
2) Bであるという事態がどういうことなのか推測できない

というどちらかのパターンで錯誤を起こしていることがハッキリわかります。端的に言えば「ボランティアを募集している自治体に登録をして、振り分け先となる避難所などからの受け入れOK連絡が来てから現地に行きましょう」という誰が見ても分かることについてはみんな理解をするが「その避難所では倒壊している家屋は少ないが雨や雪が降り始めていて充分な防寒や安全靴の手配を済ませたうえで、滞在中必要な携帯食やトイレットペーパーなど身の回りのものは備えていきましょう」という話になると、途端に「何を持っていったらいいのか」とか「どうしたら良いのか分からない」などの反応が返ってきます。

 知らんがな…。

 で、腹落ちしないまま、軽装備だけ準備して手配してくれたNPOさんのワゴンに乗って現地入りして「こんなはずじゃなかった」となるわけでして、こりゃ大変だぞと思ったわけです。

 さすがに気になったので、国立大学関係の方ならご存知の読解力テストを、失意のボランティア帰還組の皆さん数名に受けさせてみますと、それはまあ見事に文章が読めていない(=読解の評点が低い)のです。文章が読めていないから状況の推測ができず、その状況に合わせた装備を自分で用意できるかどうかも分からないというオチになるわけでして、他方で、それでも言質をどうにかしたい、自分が役に立てるなら貢献したいという気持ちはそこには確実にあります。

 学術的には、男性は特に18歳や20歳を超えても社会的知識を学ぶ余力はまだまだ残しているので、いまからでもいろんなもんを読む努力をしよう(それで読解力が上がる保証はない)という話になりますが、ほんとこりゃ大変だぞと思いました。

 ただ、我が身を振り返ってみると自分の18歳のころとか客観的に思い返しても人間のクズだったわけで、ボランティアのような社会貢献に関心がある人柄であるだけ彼らははるかに私よりマシだし、彼らの人生に幸あれと思わざるを得ないのもまた事実であります。

 私自身は月内でその手の調整手配のお手伝いからは辞するつもりではいるんですが(落ち着いたら馬力のかかる作業はもう要らないでしょうし)、何とかなるといいですね。

 画像はAIが考えた『冒険者をダンジョンに送り出す海千山千の酒場マスターが、HP減らして帰ってきた冒険者を労う図』です。





 1973年、東京都生まれ。96年慶應義塾大学法学部政治学科卒業、新潟大学法学部大学院博士後期課程在籍。社会調査を専門とし、東京大学政策ビジョン研究センター(現・未来ビジョン研究センター)客員研究員を経て、一般財団法人情報法制研究所上席研究員・事務局次長、一般社団法人次世代基盤政策研究所研究主幹。著書に『読書で賢く生きる。』(ベスト新書、共著)、『ニッポンの個人情報』(翔泳社、共著)などがある。ブロガーとしても著名。

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