バカ発見器として有能な機内ペット連れ込み論争

2024/01/06 14時59分公開

 あけました。めでたいかどうかはお前次第。本年もよろしくお願いします。

 ということで、新年早々能登半島で大地震は起きるわ飛行機事故はあるわ大火災は発生するわで大変なお正月でありました。私も風邪ひいて寝込んでたし。

https://note.com/kirik/n/n7778b41bb7c8

 で、さっそく能登半島では行政分野で「あんな過疎地に支援部隊を1,000人も突っ込めば兵站続かないんだからかなり無理筋だろ」から「津田大介が現地NGOだかからの呼び出しで現地入りしようとして渋滞に巻き込まれたうえ物品を現地調達で物議」など論争が絶えません。

 また、羽田での日本航空機と海上保安庁の期待が滑走路上で接触し、奇跡的な乗客全員離脱が世界的に話題になったうえで場所が全日空よりのC滑走路だったこともあり全日空ほか空港職員さんたちも献身的に事態対処されていたことを知り、凄いなと思ったわけです。それ以上に、海保の職員さん尊い5人の命が失われたのはとても残念なことでした。故人の皆さんの魂に限りない平安を祈っております。

 そんな中、航空機火災で機体が完全に焼け落ちたことで、貨物として輸送されていたペット2体が焼死してしまったことを受けて、ネットでも大騒ぎとなりました。つか、そこを騒ぐのかね… 誰かにとってかわいいペットであっても別の人にとってはただの不潔な畜生ですし、長距離輸送と閉所拘束で動物の受けるストレスを考えたら、なるだけ陸路で搬送するかそもそも長距離の移動に関しては人間の都合・エゴでペットを連れて行かないのもまた見識だろうと思うのです。

 ところが、芸能人も含めて「ペットを旅客として座席を使わせ人間と同じ扱いにするべき」とかいう与太話が広がり、署名運動が起きて2万人以上の馬鹿が集結するという異常事態が発生しました。いかれていると思います。例えばエールフランスでは追加の費用を払うとペットを人間と同じシートで輸送することができるオプションが販売されています。

https://wwws.airfrance.fr/information/passagers/voyager-avec-son-animal-chien-chat

 ただし、旅客扱い規程が優先され、今回のように衝突事故が起きる場合は携行物・持ち込み手荷物と同じ扱いとなるペットおよびペットケージは乗客退避の際に連れて逃げることができません。つまり、うっかりペットを持ち込んでしまったことで飼い主は客室で火災が起きたときに自ら愛するペットを手放す選択を強制されることをも意味するわけで、おそらくどんなに署名が集まって航空会社がペットを客室に携行物・持ち込み手荷物として有料オプションにするサービスを導入したとしても、同じように事故発生時で脱出しなければならないときは「機中に置いて逃げろ」と指示しなければならなくなります。

 そして、往々にしてそのような飼い主はキチガイであるため、ペットに対して人間と同様の対応をするよう求めているから追加料金を払ってでも座席を確保して動物側のストレスを考えず一緒に旅行しようとするのですから、機体が火災になりかねない状況でペットを置いて逃げることで錯乱する要因をわざわざ抱え込み、他の乗客を危険に晒す恐れのある施策を取りたがらない可能性は高かろうと思います。

 今回の日航機の奇跡的な乗客脱出は、概ね平静な乗客が順調に脱出できて最後に脱出した機長さんCAさん以下各位が機体から離れた3分程度後には機体は炎に包まれたことを考えても一人あたり数秒の遅れがあっても全員が助からなかった事故であったと思います。ここにペットが焼け死んだので可哀想という人命確保との比較衡量も満足もできない馬鹿が騒ぐのは本当に知性のリトマス試験紙とでも言うべきもので、どうせ数日もすればこの手の馬鹿の皆さんは事態も議論も忘れるだろうということを差し置くとしても残念な事態だったなと考える次第です。

 安全配慮にたゆまぬ努力を重ねてきた日本航空の皆さんと、事故対応に努力された全日空および空港職員の皆さんには改めて感謝したいと思いますし、海上保安庁におかれましてももちろん貴重な職員さんたちの人命が失われてしまった事態は深刻ですが、これに心折ることなく国民のために引き続き精励していただきたいと願っています。

 画像はAIが考えた『大きな事故が起きるとどうでもいいヒューマニティを発揮する売名行為が多発する残念な現状』です。

https://yakan-hiko.com/meeting/yamamoto/

 1973年、東京都生まれ。96年慶應義塾大学法学部政治学科卒業、新潟大学法学部大学院博士後期課程在籍。社会調査を専門とし、東京大学政策ビジョン研究センター(現・未来ビジョン研究センター)客員研究員を経て、一般財団法人情報法制研究所上席研究員・事務局次長、一般社団法人次世代基盤政策研究所研究主幹。著書に『読書で賢く生きる。』(ベスト新書、共著)、『ニッポンの個人情報』(翔泳社、共著)などがある。ブロガーとしても著名。

コメント