
鬱になって消えた前任者たちからの仕事を引き継いでみたらウキウキの件で
0-
0
(書いてもいいというので書く)
スライドして着任自体は25年1月中旬で、大量のペーパー作成と各方面調整、ロジなどやっていたわけですけれども。まあ、こんなのまずは上から順番にやって見てどういうジョブフローで、どんな重要度(優先順位)か分かってからでないと何も申し上げられませんので、黙って頑張って全部やるしか方法はないんですよ。言い換えれば、ジョブチェンジしたらレベルは1からスタートですから、経験値貯めないことにはスキルも得られないし発動もしない。
なんせ前任者さんたちが皆さんいろいろ事情があって辞めてしまわれたので、過去の知識を総動員して対処していたところ、3月も中盤になってから「いきなり消えてすみませんでした」と連絡が来るようになり、ようやく引き継ぎみたいなことができるようになったんです。嬉しや。知らないことがたあくさん。
で、どうしてそんな鬱になっちゃったのとか、ハードルとなるポイントを訊いたりもしていたんですが… ああ、まあ辛いわな。うん。
ただ、なんつーか、私は性格的にそういうのが苦にならないんですよね。揉め事だあいすき。なんか上手くいかねえぞとか、人間関係で潰れそうだとか、52年生きてきてさすがにいろんな経験もしているので「あ、それはどっかで観た光景だ」となる。自分で自分を海千山千だなあと思う瞬間ですね。
担務しなければならないエリアは広いし調整事も増えるけど、それは裏を返せば私にしかできない領域がたくさんあるぞって感じるわけです。自由だ。いっぱい起案して、鳥越なみの打率でいいから偉い人のアポを取り、説得して回り、ご理解いただいたところから順番に着地させるために計画を作り、予算を取り、ロジを決め、人員を割り振って、進捗を管理する。最高だ。
そして、上手くいきかけるとあまり親しくない偉い人から横槍が入る。ガッデム。これは私のシマだ、と抱えることはしない。全部渡す。ええ、どうせ途中で回せなくなって、話が戻ってくるってのが分かってるから。その分、進捗は遅れるけれども、ここから先は私の仕事じゃありません、こっちに振ったので遅れたら全部そっちに言ってね、絶対だYO、とCC入れて送りつけておしまい。楽だ。楽しい。これはいい。
案の定、二週間もせず話が返ってくる。それも遅延して返ってくる。ああ、よく分からんから雨ざらしにしておいたんだね。関係先からクレームが来てるってさ。これはねえ、土下座ですよ。まあ、思ったより返ってくるのが早かったけど、遅延させてすいませんでした。私のせいじゃないけど、私の仕事ではないにもかかわらず私が謝る。心からのお詫び。これですよ、仕事ってのは。
そういう賽の河原みたいな仕事の仕方だと成果が出ず、期待を感じられず、能力を発揮できないと思って、皆さん鬱になる。まあ、気持ちは分かる。
でもさあ、それって「仕事をやればやった分だけ評価される」って思い込んでない? 世の中、そういうちゃんと評価される組織のほうが少ないじゃないですか。自分の下は、やってくれた仕事に対して率直に評価して、ダイレクトに「ありがとう」「評価しています」「その仕事は満足です」とは言う。きっと、仕事をさせられている側は、手がけていることが良いのか悪いのか評価してもらったほうが続けられるし、修正も早くできるから。
ところが、自分から上は、まあ忙しいとか、責任が重いとかいろいろあるんだろうけど、あんまりちゃんと評価してこない。まあ、世界として、誰かが自分のためにやってくれて当然と思う場合も多いだろうし、普通の社会経験がなく人の上に立つとどうしても物事を公平に評価したり、進捗が良ければ褒め、駄目なら仕事を取り上げて別の人に回す、という組織人としての振る舞いをやったことがないだろうから。俗に「汗をかく」というけど、指示をするだけでは汗をかいたことにはならないんですよ。膨大な書類をチェックしたり、関連法規を調べたり、やろうとしていることの作業量全体の見積もりをして、預けられた予算と期間内にどこまでできそうかの解像度を上げていく。プロジェクトってそういうものじゃないですか。
思い返せば、自分で会社をやっていたころに、よくゲームの炎上案件を回されてきた経験や、話の通らないいかれた連中が大量にいる状況でなんとか仕事を捌く産業廃棄物業界での仕事が活きています。仕事のできない上司に花を持たせ、払いの悪い取引先にはその先からカネを取り、物事を上手く回すためには頭越しも辞さず、しかし礼は欠かさず、ちゃんと期限内予算内にやり切れるかどうかを考えながら身を処すのは、他人に対して期待しないからですよ。
みんなやりたがらない仕事だよとか、負け戦を任されて可哀想になどと言われてスライドしてきてみたけれど、ああこれは私にとって天職であるぞと心から思います。いや、これは私にしかできない仕事だ。ブツクサ文句は言いつつも、どうせ崩されると分かっていても、積める石は積んでいくんです。石を積んできた実績も、積んだ石を崩された無念さも、振り返ると人生のうちにある。
まずはこの組織がどのくらいの速度で石が積めるのかがはっきりすれば、より大構造の、この川の流れを変えられるような方法について、どう石を積んだら結果が出せるのか想像できるようになるかもしれない。目の前の問題をどうにかするために石を積むのはもちろん大事だけど、そういう石を積む指揮をしながら、もっと大きい取り組みに対してアプローチできるようネタを仕込む楽しさが、この仕事にはあるのです。
5か月ぐらいして、振り返って酒飲みながらこの文章を読んで、あああのときちゃんとやっていて良かった、と思い返してニヤニヤできるように頑張りたいなあと思います。できるところから、先を見て、粛々と。ま、2か月前は「自分にしかできない仕事をする」って思い切り書いてるんですけどね。
52歳に、なりました|山本一郎(やまもといちろう) #note #かなえたい夢
https://note.com/kirik/n/ne20e01e67916