生成AIで他人の著作物に丸乗っかり系サービスが旺盛に投資を集めている件で

2023/05/08 11時55分公開 / 2023/05/08 20時28分更新

 巷では事業家botさんとsuanさんが揉めているのを眺めてて、まあそうっすねという感じもするんすが、事業家botさんの本は面白かったので興味のある人はどうぞ。


https://books.rakuten.co.jp/rb/16457975/


 で、まあ、掲題の件なのですが、GW前ぐらいから7件8件ぐらい、PE方面に生成AIで漫画を作成したり、動画を構築するサービスがお手軽に立てられるので出資して欲しいという案件が増えました。うちですら増えているぐらいですから、VC方面にはあの手この手で資金を出してもらおうとリーチしている人たちがたくさんいることでしょう。


 そこまでは、web3やNFT方面のように「ああまたバズワードを使って溶かすお金を集めて楽しくやりたい連中が、世間を知らない大学生を騙してフロントに立てて何かしようとしているのだな」というレベルで終わるわけですけれども、問題はこれらの事業計画の中で「pixivやskebなど国内サービスとの連携を視野に」などの文言が共通して入っていることです。ものによっては、あたかももうすでに契約があるかのような投資依頼書になっていて腰が抜けるわけですよ。


 そんな馬鹿な。


 実際いまの著作権管理の世界でジェネレーティブAIの下となるデータ群をこれらのプラットフォームサービス側が勝手に利用者の制作物を教師データにしていいはずがないので、さっそく掲載されていた事業者に直メッセージを送って確認をすると、まったくそんな契約はないことが明らかになります。


 で、構築したとされるAI画像のサンプルやサンドボックスのシステムを見ると、確かに特定の絵師(私の知り合いでpixiv専でしか使ってないハンドルネームもあった)のデータを元にそれらしい作風の画像が吐き出されてそうなので、これはやっちまってるんじゃないかと思うんです。


 さすがに「待った」をかけて、当該事業の経営者やその紹介者(これがまたまあまあ大物なので困るわけですが)にこれはマズいんじゃないのと問い合わせをしているところなんですが、その返答を待たずにどうも他から相応に大口の投資を受け入れられるLOIか何かが出たらしい。マジかよ。まあ割とその辺脱法・潜脱的にやってベンチャー投資の雄みたいなツラしてる投資グループも多いでしょうから、上手く規制ができるまでに儲け切って、上場させて売り抜ければOKと考える人たちが乗っかるのはある程度見えておったわけなんですが…。


 読売新聞が悪いわけではないのですが、見ようによってはミスリードな記事が出てしまい、これが政府方針だと思い込んで猛烈にゴーを出した人もおります。


https://www.yomiuri.co.jp/national/20230428-OYT1T50014/


 chatGPTの衝撃からこっち、猛烈にいろんなサービスが企画されて技術革新も進んでいるところで、雨後の筍のように紛い物のベンチャー企業が出てきて技術や契約の内容を精査することもなく投資を突っ込み、幹事証券の政治力で強引に一芸上場ゴールさせ即下方修正されて逃げ散るような事態が繰り返されている我が国の投資シーンがまた繰り返されてしまうのでしょうか。


 もちろん、そういう良く分からない物でも可能性を信じて投資するんだという理想は承知しているし部分的に支持するところではありますが、明らかにそれ違法でしょう、契約があると言われても裏取れば無いと分かってなおカネを突っ込むのは騙しでしょうという雰囲気はします。かつてカテキン氏が「中国韓国の美人で整形している人は100%。決算書も同じで、粉飾があると分かって突っ込まなければならない」という金言を吐いて問題になりましたが、でもあれだって人脈やアウトプットを見て、本当に駄目だったらケツ毛まで抜く追い込みをする前提で馬車馬のように取り組ませる熾烈な「資本主義」が足元にあるから成立するものなのかなと思うわけでして。


 また、見る中で言えば、確かに技術的に優れてそうなサービス展開を見せてくれている投資先候補さんもあります。ニーズまで織り込んで頑張りますと言われれば、それじゃまずはシーズでお付き合いしましょうかというのはあり得ます。そういうのの見極めが大変なのも、こういう過渡期に画期的な技術分野が人の目に見える形で出てきたことの恩恵によるものなのだなあとは思います。


https://bunshun.jp/articles/-/61494

https://note.com/kirik/n/ndbb9fa070959


 画像はAIが考えた『人工知能投資ラッシュで欲の皮が突っ張った投資家がモノの良し悪しも分からずにトップに立った若者の出身大学だけを足掛かりに「熱量が高いから」という理由で大金を投資しようとして、周りにいる人たちから羽交い絞めで止められている図』です。


 1973年、東京都生まれ。96年慶應義塾大学法学部政治学科卒業、新潟大学法学部大学院博士後期課程在籍。社会調査を専門とし、東京大学政策ビジョン研究センター(現・未来ビジョン研究センター)客員研究員を経て、一般財団法人情報法制研究所上席研究員・事務局次長、一般社団法人次世代基盤政策研究所研究主幹。著書に『読書で賢く生きる。』(ベスト新書、共著)、『ニッポンの個人情報』(翔泳社、共著)などがある。ブロガーとしても著名。

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