在留外国人の国民健康保険問題と制度改革への道筋とかの雑感

2025/05/30 09時35分公開

人間迷路 Vol.478より】


 以前、こんな記事を書きました。ボク言いましたよねと誇りたいわけではありませんが、ずっと問題だと言い続けて頑張ったけどなかなか解決しなかったので、ちょっと外に情報を出しながら問題を整理しようとしたら、自見はなこ先生ほか自由民主党の先生方も問題に気づいておられてじゃあ進めようとなった感じであります。私も、少しはお役に立てたのでありましょうか。

在留外国人の4割強が国民健康保険の保険料を支払っていないようである件について(および医療機関窓口での踏み倒し未払いと一部高額療養費など)
外国人の国民健康保険未納付問題について、橋本直子さんでもご理解いただけるように説明を重ねる回
外国人の国保納付率、日本人より下回っているが「大幅」ではない 政府が答弁書閣議決定
「外国人は保険加入時に支払いを」納付漏れ防止策で自民の特別委が提言

 在留外国人による国民健康保険料の未納問題が深刻化していることはまあまあ周知できたので、このあたりも踏まえて設置されていた自由民主党では特別委員会にて、医療費の先払い制度導入を含む抜本的な制度改革の検討に着手しています。この問題は単なる医療制度の課題にとどまらず、日本の社会保障制度全体の持続可能性に関わる重要な政策課題となっています。まあ、いまのうちにやっておかないとね。

 で、見落とされがちな点ですが、まず重要なこととして、「訪日外国人」と「在留外国人」は明確に異なる概念だって話があります。国民健康保険への加入義務が生じるのは、3か月以上日本に滞在する「在留外国人」であり、短期間の観光目的で来日する「訪日外国人」とは制度上の扱いが大きく異なります。

 現行制度では、在留資格を持ち3か月以上の滞在を予定する外国人には国民健康保険への加入が義務付けられています。しかし、板橋区の調査結果が示すように、ウズベキスタン人では86.5%、スリランカ人では79.2%、ネパール人では70.8%という極めて高い未納率が確認されており、制度の根幹が揺らいでいる状況です。

 これらの未納問題が特に深刻なのは、すべて日本国民の税金で穴埋めされている点です。国会で四の五の文句を言っていた野党議員や橋本直子さんのような外国人に寄り添いがちな人物もいましたが、あれは全部嘘です。直接的には自治体は国保特別会計の欠損を一般会計からの法定外繰入金で補填せざるを得ず、そうでなくても最終的には税金で穴埋めされるからです。特に、新宿区のような特別区では外国人世帯の国保納付率がわずか44%という状況で、未済額は11億3,000万円に達しています。

 全国規模で推計すると、在留外国人の国保未納と医療機関での診療費踏み倒しを合わせた年間損失額は4,000億円を超える可能性があり、この負担はすべて日本国民が負っているのが現状です。おそらく、これから試算を重ねて中身を見ながら対策を打っていく必要がありますが、やはり経営管理ビザなどあからさまに高額療養費の国保加入者負担軽減を狙った在留外国人が毎年4,500人ぐらいいることを考えると、対策は喫緊の課題ではないかと思ったりもします。病気の外国人は帰れと言いたいのではなく、制度の抜け道を利用して、日本人の納めた健康保険料をあからさまに横取りするような不公平を放置するなという意味です。

 で、特に懸念されるのは、特定の国籍に未納が集中している傾向です。自治体担当職員からは「特定飲食業に滞納者が多い」という報告もあり、国民健康保険制度を組織的に悪用している可能性が指摘されています。同じ入国ブローカーを介して来日した外国人に国保未納者が多いという特徴も見られ、制度の抜け穴を狙った計画的な悪用が疑われます。

 こうした状況を受け、先にも述べた自由民主党では特別委員会を設置し、医療費の先払い制度導入を中心とした制度改革の検討を本格化させています。具体的には、在留外国人に対する医療機関での前払い制度や、有効なクレジットカードの提示義務化などが検討されていますが、いまもうちょっといろいろやろうぜとアイデア出しを重ねているところではあります。

 また、出入国税の引き上げと入国時点での外国人保険加入義務付け、国保加入を入国後1年以上在留する場合に限定するなどの制度変更も議論されています。東京出入国在留管理局では既に地方入管と自治体が情報を共有し、滞納者の在留許可審査に反映させる制度を開始しており、横浜市、豊島区、板橋区で実施されています。

 当たり前のことですが、外国人を受け入れる日本側の社会制度が整っていないので、結果的に外国人の権利が保障されず不当な扱いを受けたり、逆に、日本人の側が外国人よりも不利な制度のまま放置されているというような事案は他にもいろいろあると思います。その意味では、国保未納問題は氷山の一角に過ぎません。同様の構造的問題は運転免許の外免切り替え制度や外国人の消費税負担についても発生しています。外国で取得した運転免許証の日本での切り替え手続きでは、一部の国では書類の信憑性に疑問があるケースが指摘されており、適切な技能確認が行われていない可能性があります。

 最たるものは、外国人の日本での不動産取得のあり方についての議論です。いまではようやく社会問題だぞぐらいに言われるようになったのは、単純に都心、特に山手線下側と湾岸の物件価格が上がり過ぎ、中古マンションですらまともに働く日本人二馬力家庭がフルローン組んでも買えない価格になってしまった点は、評価され買われる日本と移し鏡の状態です。これは、大阪の中華民泊や京都のリノベ古民家再開発などで中華資本が乱舞している問題ともリンクしていきます。

結局、本当に大事なことには生成AIは使えない

 消費税についても、外国人事業者による免税制度の悪用や、短期滞在を装った脱税行為が問題となっており、税制全般における外国人対応の見直しが求められています。

 さらに複雑な要素として、トルコとの間のビザ免除措置により、トルコ国籍を持つクルド人の治安問題が各地で発生しています。埼玉県川口市や愛知県名古屋市などでは住民とのトラブルが頻発し、地域の安全保障上の課題となっています。

 この状況を受け、政府与党では従来の「多文化共生」と「排外主義」の二項対立を超えた「第三の道」の模索が始まっています。法的義務の厳格な履行を求める一方で、適切な支援体制も整備するという、バランスの取れたアプローチが検討されています。

 在留外国人の国保未納問題は、日本の社会保障制度の持続可能性と国際化の両立という難しい課題を提起しています。自民党特別委員会による制度改革の検討は、この問題への本格的な取り組みの第一歩と言えるでしょう。

 重要なのは、外国人の人権に配慮しつつも、法的義務の履行を厳格に求める制度設計です。先払い制度の導入や入管との連携強化などにより、制度の適正化を図りながら、真に日本社会に貢献する外国人を支援する仕組みの構築が求められています。来る参議院選挙に向けて、この問題への具体的な政策提言が注目されます。

 それもこれも、アメリカに限らずイタリアなどでも政治が混乱し、最大野党に右派勢力が反移民の旗を掲げて躍進するなどの事例と同じようなことが、日本にもいずれやってくることを危惧してのことです。これは、保守派として「本当にいまの日本社会が外国人を受け入れられる速度に見合った状況になっているか」はずっと悩ましく思っています。ここには書きませんでしたが、オーバーツーリズムの問題ひとつとっても「訪日外国人を受け入れるのは衰退に抗う日本経済の宿命ではあるんだけど、このまんまでいいんだっけ」っていう問題意識は常に持っていたいものです。

人間迷路 Vol.478 在留外国人の国民健康保険問題とはなんぞやということに触れつつ、年金改革関連法案やAI法案などについてあれこれ考える回」(2025年5月30日発行)序文より


山本一郎メルマガ『人間迷路

ネット業界とゲーム業界の投資界隈では知らぬ者のない独特のポジションを築き、国内海外のコンテンツ制作環境に精通。日本のネット社会最強のウォッチャーの一人であり、また誰よりもプロ野球とシミュレーションゲームを愛する、「元・切込隊長」こと山本一郎による産業裏事情、時事解説メルマガの決定版!


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山本一郎(やまもといちろう)

1973年、東京都生まれ。96年慶應義塾大学法学部政治学科卒業、新潟大学法学部大学院博士後期課程在籍。社会調査を専門とし、東京大学政策ビジョン研究センター(現・未来ビジョン研究センター)客員研究員を経て、一般財団法人情報法制研究所上席研究員・事務局次長、一般社団法人次世代基盤政策研究所研究主幹。著書に『読書で賢く生きる。』(ベスト新書、共著)、『ニッポンの個人情報』(翔泳社、共著)などがある。ブロガーとしても著名。

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